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Channel: ただの蚤助「けやぐの広場」~「けやぐ」とは友だち、仲間、親友という意味あいの津軽ことばです
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#640: タンメイとリンゴ

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今夏は全く予定にはなかったのだが、長女夫婦が一歳の誕生日を迎えたばかりの孫娘を、お盆休みを利用して青森の親戚にぜひお披露目したいというので、急遽、一緒に帰省してきた。
蚤助自身は5月の連休に法事で帰省したばかりだが、その時は孫娘が風邪をこじらせて肺炎になりかかり入院する騒動があったりして長女夫婦は直前に法事出席をキャンセル、今回はそのリベンジということらしい。

急な話だったので、新幹線の手配は別々で、帰りの新幹線は運よく同じ車両の近くの座席が取れたものの、行きは一緒の列車が確保できず、蚤助は別の新幹線で向かうことになった。
「えきねっと」で検索すると、帰省客でいっぱいにもかかわらず、たまたま「はやぶさ」のグランクラスに一席だけ空席があった。グリーン席よりも上級の「グランクラス」すなわちファーストクラスは初体験である。

座席は本革製のバックシェル型で、全体としてゆったりした作りになっている。座席の右肩あたりから飛び出た読書灯が少し気になるがとても快適である。

   
大宮から乗り込むと女性アテンダントが、飲み物と和食か洋食どちらかの軽食の希望を訊きにくる。夕方、青森到着後に会食の予定があることから、サンドウィッチ中心の洋食にした。
和食は上りと下りでメニューが異なり、洋食の方も春・夏と秋・冬でメニューが変わるのだそうだ。出てきた洋軽食はなかなか美味で、特にタコのマリネが絶品であった。
乗車中、ドリンクはアルコール類も含めてオール・フリー、飲み放題である。
通路を挟んだ隣席のおじさんはビール、ワイン、日本酒を次々と注文、すべて飲み干した末に爆睡してしまった。
昼間のアルコールはよく効くものだが、蚤助も赤ワインの小瓶1本、白ワイン2本空けて、すっかりほろ酔い気分である。
一般座席と比べて料金が高過ぎると感じる人もいるのではないかと思うが、なかなか満足度は高い。
乗車時間は2時間半強で、個人的にはもう少し時間がかかってもいいな、などと本末転倒のことを考えたりしている。まあ、一度くらいは体験してみてもいいだろう。


ところで、つい1年ほど前までほぼ寝たきりに近い状況だった82歳になる老母がいたって元気であった。曾孫との対面が楽しみだったということもあったろうが、主治医に高齢のせいだと診断されたまま体調不良ということで入院生活を続けていたのだ。
必ずしもセカンドオピニオンということではないものの、別の医者に診てもらったところ、処方されていた何種類もの薬の飲み合わせによる副作用ではないかとのことで、薬の量と種類を減らしたら体調が快方に向かい始めたのである。退院すると、定期的なデイサーヴィスと、公的機関の主催による高齢者向けトレーニング教室に通い始めてからめきめきと元気になった。その老母が頻りに「タンメイケン」と言う。何のことかと訊けば「短命県」だという。

この7月に厚生労働省が発表したところによれば、2013年の日本人男性の平均寿命が初めて80歳を超え、80.21歳になったというが、同じく、同省が昨年発表した2010年の都道府県別生命表によれば、青森県の男性の平均寿命は77.28歳で、1975年以降、全国最下位なのである。「いったいどこのハナシ?」である。

市町村単位でみても、青森市をはじめ東通村、平川市、むつ市、黒石市の県内5市町村がワースト10内、下位50市町村には県内全40市町村のうち24市町村が名を連ねるという。青森の男性の短命は際立っているのだ。つまり、青森県の男性は一番安い給料で、他県よりも長く働き、一番早く死ぬのである。ちなみに女性の方も、10年の平均寿命は85.34歳で2000年以降、全国最下位を続けている。階上町、大間町、深浦町の3町がワースト10に入っている。参考までに、全国最下位は男女とも大阪市西成区だそうである。

青森県の男性の喫煙率と肥満度は全国で2番目に高く、長い冬の降雪等の影響もあってか1日の平均歩数も少ない。加えて食塩摂取量の多さと健康診断の受診率の低さがある。短命の背景には青森特有の生活習慣があるようだ。仮に青森県の平均寿命が全国トップの長野県並みになれば、消費の増加などで年間100億円の経済効果があるという試算もあるようだ。

こうしたことから、青森県は「健康長寿県の実現」という戦略プロジェクトを立ち上げたそうだ。減塩、野菜摂取量の拡大等の食生活の改善、子供の肥満対策、健康増進ツアーの実施、医療・健康関連産業の創出など様々な取組みを推進し、「短命日本一」の返上を目指すという。青森の金融機関も「がん検診」の推奨など社員への健康増進に積極的な取引先に対しては金利優遇措置を講じたり、銀行敷地内の完全禁煙に踏み切る方針を打ち出したりしているという。

ということで、我が母親が通う高齢者向けトレーニング教室は県の肝煎りによるものらしいのだが、先日、地元のテレビ局が、その教室を取材にきた際、最高齢の受講者ということで母がインタビューを受け、取材クルーが自宅の寝室まで撮影に押し掛けるという騒ぎになった。1年前にはほぼ寝たきり同然だった高齢者が適切な運動による奇跡の健康回復という筋書きは、「短命県」解消を標榜するニュース番組にはピッタリの素材だと思われたのだろう。母の出演(?)した番組は、無事ローカル局で放送され、母は周囲ですっかり「時の人」になっていた(笑)。



短命は様々な要素が長期間積み重なった結果から生じるものだ。ただし、平均寿命ばかりではなく、健康寿命を延ばすことも重要だといわれている。でも長生きには即効薬はなく、地道な対策を息長く続けるしかない。
青森県はリンゴ生産日本一として知られていて、県庁には「1日1個のりんごは医者を遠ざける」と記した看板が掲げられている。もっとも、現在のリンゴの品種改良は目覚ましく、昔にくらべて糖度も上がり、リンゴ1個も大きくなっていて、飽食時代の現代人にとっては、むしろ果糖が悪さをする可能性もないとはいえない。専門家によれば、現代では「1日1個ではなく1日半個で十分」ということらしい。
ともあれ、このヨーロッパの俚諺が、青森では「空言」、りんご生産2位の長寿県である長野では「至言」となっている現状というのは、蚤助にしてみるとやはり情けない。

長生きの秘訣どうやら女色(おんないろ) (蚤助)

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