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Channel: ただの蚤助「けやぐの広場」~「けやぐ」とは友だち、仲間、親友という意味あいの津軽ことばです
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#549: オールウェイズ・ラヴ・ユー

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もう1年半も前のことになるが、ホイットニー・ヒューストンの死はショッキングであった。
グラミー賞発表前夜という死のタイミングといい、遺体発見時の状況といい、スキャンダラスな事故だったことから、メディアの関心もかなり高かった。
晩年は結婚生活の破綻やアルコール・薬物依存症になっていたそうで、死因も薬物使用に起因する失神によって浴槽で溺死したものと報道されていた。

1990年代を代表する歌姫の一人であった。
母親はエルヴィス・プレスリーやアレサ・フランクリンのバック・コーラスとして知られるスウィート・インプレッションズのリード・ヴォーカル、シシー・ヒューストンで、従姉の大歌手ディオンヌ・ワーウィックをはじめ、親族には音楽関係者も多い音楽一族に生まれ育ったわけである。


代表曲はやはり“I WILL ALWAYS LOVE YOU”(オールウェイズ・ラヴ・ユー)だと思うが、元々は、わが国でも人気の高い女性カントリー歌手のドリー・パートンが1974年に自作・自演で発表しカントリー・チャートで1位を獲得したヒット曲である。
シンプルなカントリー・サウンドの伴奏で、少しハスキー・ヴォイスのドリーの歌は、切々とした哀感のこもったものであった(こちら)。
ドリーの歌は、素朴なだけに深い思いがストレートに伝わり、聴く者の心にじわりと沁み込んでくる。


(ドリー・パートン)
If I should stay, I would only be in your way
So I'll go, bvut I know I'll think of you every step of the way
And I will always love you…
もし私が残ったら あなたの邪魔になるだけ
だから行くわ でも分かってるの あなたのことを思い続けることを
そして いつもあなたを愛していることを…
ドリーがこの曲を書いたとき、彼女は公私ともにパートナーだったカントリー歌手兼ソングライター、ポーター・ワゴナーとの生活が破局を迎えていたという。
その辛い思いが“I Will Always Love You(いつもあなたを愛するでしょう)”という歌詞とタイトルに込められている。

ドリーとは親友の仲でもあるリンダ・ロンシュタットは、翌75年リリースしたアルバム“PRISONOR IN DISGUISE”(邦題「哀しみのプリズナー)でこの歌をカヴァーしている。
リンダらしいウェスト・コースト風の爽やかなカントリー・ロックとして瑞々しく歌っている(こちら)。

また、ドリーが出演した80年代の映画の挿入歌に使用されたという記録もあるが、原曲があまりにも素朴なカントリー・ナンバーだったためか、ヒットしたとはいうものの、やがて多くの音楽ファンの記憶からは零れ落ちてしまう曲のひとつであった。

♪ ♪
埋もれかけようとしていたこのカントリー・ヒットを世界的な名曲に仕立て上げたのがデヴィッド・フォスターである。

当時、人気の絶頂にあったホイットニー・ヒューストンとハリウッドの人気俳優ケヴィン・コスナーが共演した映画『ボディガード』(THR BODYGUARD‐1992)の主題曲として使われることになった。
当初、別の曲を使う予定だったところ、その曲がすでに他の作品で使用されていたために、探し出されてきたのがこの曲だったという。

音楽のプロデュースと編曲を担当したフォスターは、素朴な原曲を華麗でドラマティックなバラードに仕立て、ホイットニーの歌唱力と表現力を際立たせることに成功した(こちら)。
まるで、マイ・フェア・レディのイライザのように、素朴な味わいの楽曲がゴージャスに変身してしまったのである。
この作品は全米チャートの1位を14週間続けるという空前の大ヒットとなり、映画のサウンドトラック盤もベストセラーを記録した。


(ホイットニー・ヒューストン)
♪ ♪ ♪
以前こちらで紹介したことがあるが、私の住まいの近くで毎年開催されている「さいたま新都心Jazz Vocal Contest」で、時折、歌唱力に相当自信があると見受けられる出場者がこの曲を歌うことがある。
それも決まってホイットニー・ヒューストン流の歌い方、言葉は悪いが物真似のような歌い方なのだ。
音程といい声量といい相当の力量が要求されるので、誤魔化しがきかないという難しい歌であるが、皆それなりに上手くて舌を巻く。
だが、そんな達者な歌を聴きつつ、「どうしてホイットニーのように歌ってしまうのだろうか? それだけ彼女の歌の印象が強かったということなのだろう! でも、折角それなりの歌唱力を持ったヴォーカリストならばもっと自分の個性で歌っていいのに…」などといろいろ勝手なことを考えてしまうのだ。
でも、自分の個性をきちんと出すということはそう簡単なことではない。
きっと自分の個性を上手に発揮できる者が、プロとして生きていくことができるのであろう。

映画『ボディガード』の方も言及したいのだが、長くなってしまいそうなので、「次稿に続く」ということで…。

自分には甘く、他人には厳しく…

誰よりも自分の棚は広くする (蚤助)
それが「私の個性」かも!(笑)


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