「運」という漢字は、「軍」+「之繞」(しんにょう)から成り立っている。
「軍」は車の上で旗がなびく形だとか、あるいは、兵車で丸く取り巻く陣形を表わすのだそうだ。
古の軍隊というのは将軍の乗る兵車の動き(目印は掲揚された軍旗)に従って行動したのであろう。
「之繞」は「足の運動」のことだそうなので、「軍」の丸い陣形と相俟って、「運」は基本的に「ぐるぐる回る動き」のことを表わす漢字だということになる。
♪
辞書をみると、その「運」という文字には4つの意味があるようだ。
(1)運行・運動など「定まった通りにめぐり行く」という意味、(2)運輸・運賃など「運ぶ」という意味、(3)運転・運営など「物事を円滑に動かして働かせる」という意味、(4)運勢・運命など「めぐり合わせ」という意味である。
これらは字源から自然に導き出されてきそうな気がするが、最後の「めぐり合わせ」というのはどうであろうか。
「運」という漢字が成立した当時、一般に「良いこと」と「悪いこと」は巡りまわってくるものと考えられていたといい、そもそも「ぐるぐる回る動き」を表わす「運」にそのような意味合いを持たせることは自然な流れだったといえるだろう。
「禍福は糾える縄の如し」で、正に「運」と「不運」は代わる代わるやってくるのだ。
♪ ♪
平成21年5月のNHK文芸選評の課題が「運ぶ」であった。
「運ぶ」ものはいろいろだが、「運ぶ」が意味するものもいろいろである。
物や人をある場所から他の場所へ移動させるのが「荷を運ぶ」、ある場所まで出向くのが「足を運ぶ」、物事を段取りに従って進めるのが「事を運ぶ」、物を用いて動作を進めるのが「筆を運ぶ」、物事を滞りなく進めるのが「円滑に運ぶ」である。
また、「行く」や「来る」の尊敬語として「ようこそのお運びで」などと使われる。
普段は、言葉の意味など考える機会はないのだが、こうして川柳の題として改めて出されてみると、少しは詳しく調べてみようという気になる。
作句のヒントになるものはないかなどという、ある種のスケベ心もあるのだけれど…(笑)
♪ ♪ ♪
課題「運ぶ」 安藤波瑠 選
餌運び親鳥必死子も必死 (松山佑志)
ウイルスが無賃で空を飛んでくる (古野つとむ)
運ばれて運ばれて今腹の中 (小島和彦)
山一つどこへ運んだ新団地 (渡辺隆義)
救急車命拾いに県境 (吉川 勇)
寝不足のロボット乗せて通勤者 (奥田 実)
足繁く仕事尋ねて三千里 (高井正勝)
真実を運ぶ地検の段ボール (松?竜人)
調子よく事が運んで金が要り (小泉好子)
ハンガーを巣へと烏もリサイクル (赤津光治)
走りつつ仕事をこなすミキサー車 (丸山芳夫)
体重も担架に詫びて運ばれる (越野雪太郎)
スクワット自力で私運ぶため (井口美代子)
いまどきを運んでくれる帰省の子 (吉丸玲子)
携帯が自慢の孫を持ち運ぶ (舟橋義則)
クール便今日も我が家を通り過ぎ (沢田正司)
夕暮れの風スパイスの味を乗せ (椎野 茂)
月明かり詩とメロディーをデリバリー (小林 修)
恙無く給与運搬人を終え (野村信之)
光陰の矢に運ばれて行く命 (岩田清司)
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全員がダンプのような蟻の列 (平井義雄)
補聴器に運ばれてくるいい話 (吉富 廣)
宇宙への夢をきぼうへ運び上げ (藤中公人)
今年こそ金運運べ春財布 (大竹保行)
薄給を運んだ頃が華だった (林田あつ子)
風邪引きの床に隔離の膳が来る (木山 清)
口元へ運び実感する介護 (田中良典)
一粒の種が運んだ樹の命 (島 香代)
温もりを子らが運んでくるメール (梅田きみ子)
空気だけ運ぶ日もある過疎のバス (赤井武次)
おばあちゃんご先祖抱いてお引越し (塩野昌一)
異議なしの会議を酒宴待ち受ける (児玉琢也)
図書館の車知識を連れて来る (薬師神とし子)
運ばれた病院次第運不運 (清水 元)
筆運び見事なんだが字が読めぬ (塩沢達成)
一命を託す臓器をヘリに載せ (大澤いさ子)
幼稚園バスに歌声笑い声 (岡本 恵)
ウォーキングつづけて軽い足運び (相馬豊吉)
バーゲンを両手に余し妻が呼ぶ (中村充一)
以上が、このときの入選と佳作句集なのだが、肝心の拙句で運んだものとは…
眉のない顔もゴミ出す収集日 (蚤助)
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ということで、「ゴミ袋」…。
この句、佳作に選んでいただいたので、「うまく事が運ぶ」結果となったわけである。
「軍」は車の上で旗がなびく形だとか、あるいは、兵車で丸く取り巻く陣形を表わすのだそうだ。
古の軍隊というのは将軍の乗る兵車の動き(目印は掲揚された軍旗)に従って行動したのであろう。
「之繞」は「足の運動」のことだそうなので、「軍」の丸い陣形と相俟って、「運」は基本的に「ぐるぐる回る動き」のことを表わす漢字だということになる。
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辞書をみると、その「運」という文字には4つの意味があるようだ。
(1)運行・運動など「定まった通りにめぐり行く」という意味、(2)運輸・運賃など「運ぶ」という意味、(3)運転・運営など「物事を円滑に動かして働かせる」という意味、(4)運勢・運命など「めぐり合わせ」という意味である。
これらは字源から自然に導き出されてきそうな気がするが、最後の「めぐり合わせ」というのはどうであろうか。
「運」という漢字が成立した当時、一般に「良いこと」と「悪いこと」は巡りまわってくるものと考えられていたといい、そもそも「ぐるぐる回る動き」を表わす「運」にそのような意味合いを持たせることは自然な流れだったといえるだろう。
「禍福は糾える縄の如し」で、正に「運」と「不運」は代わる代わるやってくるのだ。
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平成21年5月のNHK文芸選評の課題が「運ぶ」であった。
「運ぶ」ものはいろいろだが、「運ぶ」が意味するものもいろいろである。
物や人をある場所から他の場所へ移動させるのが「荷を運ぶ」、ある場所まで出向くのが「足を運ぶ」、物事を段取りに従って進めるのが「事を運ぶ」、物を用いて動作を進めるのが「筆を運ぶ」、物事を滞りなく進めるのが「円滑に運ぶ」である。
また、「行く」や「来る」の尊敬語として「ようこそのお運びで」などと使われる。
普段は、言葉の意味など考える機会はないのだが、こうして川柳の題として改めて出されてみると、少しは詳しく調べてみようという気になる。
作句のヒントになるものはないかなどという、ある種のスケベ心もあるのだけれど…(笑)
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課題「運ぶ」 安藤波瑠 選
餌運び親鳥必死子も必死 (松山佑志)
ウイルスが無賃で空を飛んでくる (古野つとむ)
運ばれて運ばれて今腹の中 (小島和彦)
山一つどこへ運んだ新団地 (渡辺隆義)
救急車命拾いに県境 (吉川 勇)
寝不足のロボット乗せて通勤者 (奥田 実)
足繁く仕事尋ねて三千里 (高井正勝)
真実を運ぶ地検の段ボール (松?竜人)
調子よく事が運んで金が要り (小泉好子)
ハンガーを巣へと烏もリサイクル (赤津光治)
走りつつ仕事をこなすミキサー車 (丸山芳夫)
体重も担架に詫びて運ばれる (越野雪太郎)
スクワット自力で私運ぶため (井口美代子)
いまどきを運んでくれる帰省の子 (吉丸玲子)
携帯が自慢の孫を持ち運ぶ (舟橋義則)
クール便今日も我が家を通り過ぎ (沢田正司)
夕暮れの風スパイスの味を乗せ (椎野 茂)
月明かり詩とメロディーをデリバリー (小林 修)
恙無く給与運搬人を終え (野村信之)
光陰の矢に運ばれて行く命 (岩田清司)
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全員がダンプのような蟻の列 (平井義雄)
補聴器に運ばれてくるいい話 (吉富 廣)
宇宙への夢をきぼうへ運び上げ (藤中公人)
今年こそ金運運べ春財布 (大竹保行)
薄給を運んだ頃が華だった (林田あつ子)
風邪引きの床に隔離の膳が来る (木山 清)
口元へ運び実感する介護 (田中良典)
一粒の種が運んだ樹の命 (島 香代)
温もりを子らが運んでくるメール (梅田きみ子)
空気だけ運ぶ日もある過疎のバス (赤井武次)
おばあちゃんご先祖抱いてお引越し (塩野昌一)
異議なしの会議を酒宴待ち受ける (児玉琢也)
図書館の車知識を連れて来る (薬師神とし子)
運ばれた病院次第運不運 (清水 元)
筆運び見事なんだが字が読めぬ (塩沢達成)
一命を託す臓器をヘリに載せ (大澤いさ子)
幼稚園バスに歌声笑い声 (岡本 恵)
ウォーキングつづけて軽い足運び (相馬豊吉)
バーゲンを両手に余し妻が呼ぶ (中村充一)
以上が、このときの入選と佳作句集なのだが、肝心の拙句で運んだものとは…
眉のない顔もゴミ出す収集日 (蚤助)
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ということで、「ゴミ袋」…。
この句、佳作に選んでいただいたので、「うまく事が運ぶ」結果となったわけである。