秋分の日、さいたま新都心のシネマコンプレックスへ李相日監督の映画『許されざる者』を観に出かけた。
いつもは浦和のシネコンを利用するのだが、今回、さいたま新都心へ出かけたのには少々理由があったのだ。
クリント・イーストウッドの秀作西部劇(Unforgiven‐1992)を明治時代の北海道を舞台にリメイクした作品で、寡黙でストイックな主人公に渡辺謙、冷酷な警察署長の佐藤浩市との間合いの緊迫感が全編を通じて持続する、なかなか見応えのある作品であった。
原作ではモーガン・フリーマンが演じた主人公の相棒を柄本明が飄々と演じ好感が持てたし、アイヌの若者を演じた柳楽優弥も意外であった。
アップでスクリーンに映し出される髭の精悍な顔つきは、時折、若いころの三船敏郎そっくりになり、驚くほど似てくる。
もっとも、セリフの言い回し、声の調子などは、まだ軽くて青臭さが抜けきれていないようで、到底三船の迫力には敵わないのは止むを得ないところであった。
朝いちばんの上映回を選んだためか、観客の入りは3分の1くらいだったが、映画館を出るとまだお昼前である。
♪
実は、この3連休、さいたま新都心では「第10回さいたま新都心 JAZZ DAY」が行われているのだ。
3日間で、ビッグ・バンド31組、スモール・バンド27組が入れ替わり立ち代わり出演するジャズ・フェスティバルである。
出演者はアマチュアなのだが、過日、蚤助が通販でCDを入手したバンジョーの若手ナンバーワン奏者の青木研氏や、人気抜群のアメリカ空軍太平洋音楽隊のジャズ・コンボやビッグ・バンドもゲスト出演するという。
過去の9回は2日間行われていたものが、今年は10回を記念した3日間の会期ということで、出演バンドも大幅に増えている。
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昼過ぎから、2〜3のスモール・バンド(コンボ)を聴いたあと、ビッグ・バンドのステージの方へまわることにした。
やはり各バンドとも人気なのはカウント・ベイシーのレパートリーで、必ずと言っていいほどベイシーが演奏される。
ベイシー・バンドに数々の楽曲を提供した様々なコンポーザーやアレンジャーのスコアが入れ替わり立ち代わり奏でられ、「ベイシー翁、永遠なれ」といった按配である。
アマチュアらしく各楽器のソロはあまり上手いとははいえないまでも、バンド全体で鳴らすアンサンブルの楽しさは充分感じらる。
特になかなか思うように練習時間がとれない社会人バンドともなると、各メンバーの熱い思いが聴衆に直に伝わってくる。
とても良い雰囲気である。
また、ヴォーカリストが標準装備されているビッグ・バンドがいくつかあったのに驚かされた。
ベイシー・ナンバーの合間に、専属ヴォーカリスト(女性)が数曲歌うのだが、別のバンドとたまたまヴォーカル入りの楽曲が重複し、図らずも聴き比べとなったのである。
♪ ♪
曲は“Orange Colored Sky”(1950)、ミルトン・デラグとウィリー・スタインの手になる曲で、ナット・キング・コールの得意曲として知られている。
“Orange Colored Sky”というのは「オレンジ色の空」、すなわち「夕焼け空」である。
少しコミカルな内容で、英語の早口言葉がポイントの歌なので、英語を母国語としない日本人のプロの歌手でも難しい曲である。
こんな難曲をアマチュア(あまちゃん)の歌手がよく歌うことにしたものだと、その無謀さに逆に感心してしまった(笑)。
I was walking along, minding my business
When out of the orange colored sky, Flash! Bam! Alakazam!
Wonderful you came by
I was humming a tune, drinking in sunshine
When out of that orange colored view, Wham! Bam! Alakazam!
I got a look at you…
一人で考え事をしながら歩いてた
そしたら オレンジ色の空(夕焼け空)から
「ワォ! バン! アラカザム!」
素敵な君が 突然目の前に
ハミングして陽射しに酔っていた
するとオレンジ色に染まった風景から
「ウァー! バン! アラカザム!」
いきなり君が 目に飛び込んできた
一目で僕は悲鳴を上げた
「梁が落ちる! 飛び散るガラスに注意!」
天井は落ち 床は抜け
僕はきりもみしながら こう叫んでた
「そう、これだ! これだ! これだ!」
それまで考え事をしながら歩いてた
なのに恋が目に飛び込んできて
「ヒャー! バン! アラカザム!」
オレンジ色に染まった 紫色のストライプから
可愛い緑の水玉が 散らばった空になったんだ…
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第三節目の「梁が落ちる…」は、なかなか訳しづらい歌詞である。
原詞では“One look and I yelled timber, watch out for flying glass”となっていて、その後に“Cause the ceiling fell in and the bottom fell out”と続くので、何とか辻褄合わせでこのように訳したわけである。
以下、“I went into a spin and I started to shout, I've been hit. This is it, this is it, this is it.”と続き、これを一気に早口言葉のように歌わなければならないのだ。
歌のシチュエーションを補足しておくと、まず、夕陽の中を物思いにふけりながらトボトボと歩いていると思いねえ(笑)。
そこに曲がり角から、自転車かジョギング中か知らないが、彼女が突然ドーンとぶつかってきたわけだ。
「アラカザム!」は「アブラカダブラ!」と同様、古から呪文として知られている言葉で、「ワッ!何だ?南無阿弥陀仏!」とぶっ飛ばされたわけであろう。
このあたり、今ならば「ジェ、ジェ、ジェ!」と言うところだろう(笑)。
「だ、大丈夫ですか?」と彼女が駆け寄ってきて、ボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーの始まり、始まりというわけである。
最後の「紫色のストライプ、緑の水玉」は彼女の来ていた服の柄で、僕にはもうそれしか目に入らないのだった…。
♪ ♪ ♪
1950年、ナット・キング・コール・トリオがスタン・ケントン楽団の伴奏で、実に楽しそうに歌ったこの歌は13週間チャート・インするヒットとなった(こちら)。
1965年にコールが亡くなったとき、その死を悼んでオスカー・ピーターソンが、黄金のトリオを結成する。
本家のコール・トリオがコールのピアノ、ウェスリー・プライスのベースにオスカー・ムーアのギターだったが、ピーターソンの方はレイ・ブラウンのベース、ハーブ・エリスのギター。
ピーターソンはコールとの約束で封印していたヴォーカルを解禁した。
コールそっくりの歌声を“With Respect To Nat”というアルバムで披露しているが、動画は見つけられなかったのが残念。
さらに、もうひとつ、やはりナット・コールの愛娘ナタリー・コールの歌をこちらで…。
「Flash! (Wham!) Bam!」というのはアメリカン・コミックでよく出てくる擬音語だが、ここは「あまちゃん」風に「ジェ、ジェ、ジェ!」のノリで、弾けて歌うところでしょうな。
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ところで、JAZZ DAYに登場したあまちゃんシンガーの出来はどうだったかって?
それはもう「ワォ! バン! アラカザム!」で、結構楽しかったぜ…(笑)。
伴奏が支えてくれるのど自慢 (笑)
いつもは浦和のシネコンを利用するのだが、今回、さいたま新都心へ出かけたのには少々理由があったのだ。
クリント・イーストウッドの秀作西部劇(Unforgiven‐1992)を明治時代の北海道を舞台にリメイクした作品で、寡黙でストイックな主人公に渡辺謙、冷酷な警察署長の佐藤浩市との間合いの緊迫感が全編を通じて持続する、なかなか見応えのある作品であった。
原作ではモーガン・フリーマンが演じた主人公の相棒を柄本明が飄々と演じ好感が持てたし、アイヌの若者を演じた柳楽優弥も意外であった。
アップでスクリーンに映し出される髭の精悍な顔つきは、時折、若いころの三船敏郎そっくりになり、驚くほど似てくる。
もっとも、セリフの言い回し、声の調子などは、まだ軽くて青臭さが抜けきれていないようで、到底三船の迫力には敵わないのは止むを得ないところであった。
朝いちばんの上映回を選んだためか、観客の入りは3分の1くらいだったが、映画館を出るとまだお昼前である。
♪
実は、この3連休、さいたま新都心では「第10回さいたま新都心 JAZZ DAY」が行われているのだ。
3日間で、ビッグ・バンド31組、スモール・バンド27組が入れ替わり立ち代わり出演するジャズ・フェスティバルである。
出演者はアマチュアなのだが、過日、蚤助が通販でCDを入手したバンジョーの若手ナンバーワン奏者の青木研氏や、人気抜群のアメリカ空軍太平洋音楽隊のジャズ・コンボやビッグ・バンドもゲスト出演するという。
過去の9回は2日間行われていたものが、今年は10回を記念した3日間の会期ということで、出演バンドも大幅に増えている。

昼過ぎから、2〜3のスモール・バンド(コンボ)を聴いたあと、ビッグ・バンドのステージの方へまわることにした。
やはり各バンドとも人気なのはカウント・ベイシーのレパートリーで、必ずと言っていいほどベイシーが演奏される。
ベイシー・バンドに数々の楽曲を提供した様々なコンポーザーやアレンジャーのスコアが入れ替わり立ち代わり奏でられ、「ベイシー翁、永遠なれ」といった按配である。
アマチュアらしく各楽器のソロはあまり上手いとははいえないまでも、バンド全体で鳴らすアンサンブルの楽しさは充分感じらる。
特になかなか思うように練習時間がとれない社会人バンドともなると、各メンバーの熱い思いが聴衆に直に伝わってくる。
とても良い雰囲気である。
また、ヴォーカリストが標準装備されているビッグ・バンドがいくつかあったのに驚かされた。
ベイシー・ナンバーの合間に、専属ヴォーカリスト(女性)が数曲歌うのだが、別のバンドとたまたまヴォーカル入りの楽曲が重複し、図らずも聴き比べとなったのである。
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曲は“Orange Colored Sky”(1950)、ミルトン・デラグとウィリー・スタインの手になる曲で、ナット・キング・コールの得意曲として知られている。
“Orange Colored Sky”というのは「オレンジ色の空」、すなわち「夕焼け空」である。
少しコミカルな内容で、英語の早口言葉がポイントの歌なので、英語を母国語としない日本人のプロの歌手でも難しい曲である。
こんな難曲をアマチュア(あまちゃん)の歌手がよく歌うことにしたものだと、その無謀さに逆に感心してしまった(笑)。
I was walking along, minding my business
When out of the orange colored sky, Flash! Bam! Alakazam!
Wonderful you came by
I was humming a tune, drinking in sunshine
When out of that orange colored view, Wham! Bam! Alakazam!
I got a look at you…
一人で考え事をしながら歩いてた
そしたら オレンジ色の空(夕焼け空)から
「ワォ! バン! アラカザム!」
素敵な君が 突然目の前に
ハミングして陽射しに酔っていた
するとオレンジ色に染まった風景から
「ウァー! バン! アラカザム!」
いきなり君が 目に飛び込んできた
一目で僕は悲鳴を上げた
「梁が落ちる! 飛び散るガラスに注意!」
天井は落ち 床は抜け
僕はきりもみしながら こう叫んでた
「そう、これだ! これだ! これだ!」
それまで考え事をしながら歩いてた
なのに恋が目に飛び込んできて
「ヒャー! バン! アラカザム!」
オレンジ色に染まった 紫色のストライプから
可愛い緑の水玉が 散らばった空になったんだ…

第三節目の「梁が落ちる…」は、なかなか訳しづらい歌詞である。
原詞では“One look and I yelled timber, watch out for flying glass”となっていて、その後に“Cause the ceiling fell in and the bottom fell out”と続くので、何とか辻褄合わせでこのように訳したわけである。
以下、“I went into a spin and I started to shout, I've been hit. This is it, this is it, this is it.”と続き、これを一気に早口言葉のように歌わなければならないのだ。
歌のシチュエーションを補足しておくと、まず、夕陽の中を物思いにふけりながらトボトボと歩いていると思いねえ(笑)。
そこに曲がり角から、自転車かジョギング中か知らないが、彼女が突然ドーンとぶつかってきたわけだ。
「アラカザム!」は「アブラカダブラ!」と同様、古から呪文として知られている言葉で、「ワッ!何だ?南無阿弥陀仏!」とぶっ飛ばされたわけであろう。
このあたり、今ならば「ジェ、ジェ、ジェ!」と言うところだろう(笑)。
「だ、大丈夫ですか?」と彼女が駆け寄ってきて、ボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーの始まり、始まりというわけである。
最後の「紫色のストライプ、緑の水玉」は彼女の来ていた服の柄で、僕にはもうそれしか目に入らないのだった…。
♪ ♪ ♪
1950年、ナット・キング・コール・トリオがスタン・ケントン楽団の伴奏で、実に楽しそうに歌ったこの歌は13週間チャート・インするヒットとなった(こちら)。
1965年にコールが亡くなったとき、その死を悼んでオスカー・ピーターソンが、黄金のトリオを結成する。
本家のコール・トリオがコールのピアノ、ウェスリー・プライスのベースにオスカー・ムーアのギターだったが、ピーターソンの方はレイ・ブラウンのベース、ハーブ・エリスのギター。
ピーターソンはコールとの約束で封印していたヴォーカルを解禁した。
コールそっくりの歌声を“With Respect To Nat”というアルバムで披露しているが、動画は見つけられなかったのが残念。
さらに、もうひとつ、やはりナット・コールの愛娘ナタリー・コールの歌をこちらで…。
「Flash! (Wham!) Bam!」というのはアメリカン・コミックでよく出てくる擬音語だが、ここは「あまちゃん」風に「ジェ、ジェ、ジェ!」のノリで、弾けて歌うところでしょうな。

ところで、JAZZ DAYに登場したあまちゃんシンガーの出来はどうだったかって?
それはもう「ワォ! バン! アラカザム!」で、結構楽しかったぜ…(笑)。
伴奏が支えてくれるのど自慢 (笑)