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Channel: ただの蚤助「けやぐの広場」~「けやぐ」とは友だち、仲間、親友という意味あいの津軽ことばです
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#444: サムシング

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ビートルズとして最初にレコーディングされたジョージ・ハリスン(1943‐2001)の曲は、1963年の“DON'T BOTHER ME”だった。
ジョージの作品はビートルズ時代に何曲か録音されているが、ヒット曲としてあまり注目を集めることはなかった。
ビートルズの音楽は、あくまでもジョン・レノン&ポール・マッカートニーというソング・ライター・コンビというのが、世界中のビートルズ・ファンの共通認識であった。

(ABBEY ROAD/The Beatles)

ビートルズとしての最後のレコーディングとなった『ABBEY ROAD』(1969)は、事実上、グループが分裂状態にあったにもかかわらず、メンバー4人が有終の美を飾るように、最後の結束を記録した傑作アルバムとして知られている。
粒よりの楽曲を揃えつつ、トータル・アルバムのような意匠を凝らした構成は見事なもので聴き飽きることがない。

このアルバムには、ジョージが書いた美しい曲が2曲収められている。
“HERE COMES THE SUN”と“SOMETHING”である。
多くのファンは、それまでのビートルズに抱いていた印象を改める必要に迫られた。
“SOMETHING”が“COME TOGETHER”と両A面シングルとしてリリースされて大ヒットしたからである。
ちなみにジョージの作品がA面扱いされたのは初めてのことであった。

ジョージがこの曲を作ったのが68年のこと。
同年のビートルズのアルバム『THE BEATLES』(ホワイト・アルバム)のレコーディング中に原型ができたそうだが、アルバムには間に合わなかったというわけである。

ジェイムズ・テイラーがアップル・レコードに移籍して最初にリリースしたアルバム『JAMES TAYLOR』(68)に“SOMETHING IN THE WAY SHE MOVES”という曲が収録されている。
このタイトルをヒントに曲想を得たのだというが、そういうわけで“SOMETHING”の冒頭の歌詞はまさにそのままのパクリである(笑)。

(JAMES TAYLOR/James Taylor)

69年2月25日、すなわちジョージ26回目の誕生日に最初のデモ録音が行われたという。
この録音は、現在『ANTHOLOGY 3』に収録されているが、この曲の素の魅力を味わうことができる。

それから間もなく、ビートルズより先にジョー・コッカーが録音したが、リリースが延び延びとなっているうちに『ABBEY ROAD』が発売され一足遅れてしまった。
コッカーのヴァージョンは、アーシーなサウンドと女声コーラスをバックに、彼のしわがれ声がソウルフルである。
このレコーディングにはジョージも立ち会って仕上がりに満足したそうである。

(THE ANTHOLOGY/Joe Cocker)

ビートルズの公演活動は66年までで、その後はスタジオにおけるレコーディングだけであったが、解散したのが71年、『ABBEY ROAD』の次に先に録音されていた『LET IT BE』が発売され、それがビートルズとしての最後のアルバムとなったのは皆様ご承知の通りである。

♪♪♪♪♪♪
“SOMETHING”とは、彼女の中にある「何か」である。
その「何か」が、ぼくを惹きつける。
他の誰よりもぼくを惹きつけるのである。

彼女が愛をささやくときの「何か」、彼女の微笑みの中の「何か」。
それがこの歌の「サムシング」である。

彼女は聞く。
この愛は育っていくの?…と。
それはわからない。
わからないと、ぼくは言う。

でも彼女の何気ない仕草を見ると、彼女は何もかもわかっているように思える。
ぼくにできることといえば彼女を思い続けることだけだ…

こんな歌詞である。

加えて、ゆったりと下降するテーマ部のベースラインとドラマティックな展開をみせるサビというバラードの常道からすれば少し異質な魅力を持った楽曲だが、そこが人々に愛される理由でもあるだろう。
バックのストリングスも美しさをさらに引き立てている。

♪♪♪♪♪♪
“SOMETHING”はビートルズの楽曲の中では“YESTERDAY”に次いでカヴァーが多い作品とされている。
シャーリー・バッシー、ペリー・コモ、ペギー・リー、エルヴィス・プレスリー、アイザック・ヘイズ、リナ・ホーン、ボビー・ウーマック、チェット・アトキンスに至るまで多方面のカヴァー・ヴァージョンが生まれている。
無論、御大フランク・シナトラもレパートリーにしていたが、ビートルズの楽曲の中で最も優れたものだと評価していた。
しかし、彼はジョージの作だとは知らずレノン=マッカートニーによる作品だとばかり思っていたという。
そういえばマイケル・ジャクソンもジョージの作品だと知って驚いた、しかもジョージとの会話中のことだった、というハナシを何かで読んだことがある(笑)。

ソングライター、ジョージ・ハリスンへの評価はまさしく“SOMETHING”から始まったのだった。

♪♪♪♪♪♪
本日の1句
「見えない字眼鏡かけたら読めない字」(蚤助)

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