前稿の最後でキング・エルヴィスが歌う“FOOLS RUSH IN”にふれたが、それでまた新たな連想が働いた。
エルヴィスのバラードの傑作“CAN'T HELP FALLING IN LOVE”(好きにならずにいられない)である。
クラシック至上主義者やジャズキチなどはエルヴィス・プレスリーの名前が出ただけで敬遠してしまうかもしれないが、蚤助は音楽に関しては雑食系なので全く拒否反応はない(笑)。
彼の主演映画は、コンサート・ライヴをそのまま映画化したいわゆるオン・ステージものを除いても、1956年の『やさしく愛して』からおよそ30本くらいあるらしい。
彼は除隊後の60年から61年にかけて『GI・ブルース』、『燃える平原児』、『嵐の季節』など映画に積極的に出演し始めたが、第8作目にあたる『ブルー・ハワイ』(ノーマン・タウログ監督‐1961)は、劇中歌にとどまらず映画の出来も良く、なかなか楽しめる作品であった。
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劇中“ブルー・ハワイ”、“ハワイアン・ウェディング・ソング”、“ロカ・フラ・ベイビー”などの佳曲が出てくるが、中でも一番のヒットとなったのが“好きにならずにいられない”(CAN'T HELP FALLING IN LOVE)であった。
後年、エルヴィスのステージのクロージング・テーマともなった重要な曲である。
映画ではオルゴールから流れてくるメロディに合わせてエルヴィスが歌うという粋な演出がなされていた。
Wise men say only fools rush in
But I can't help falling in love with you…
賢人は言う 愚か者だけが事を急ぐと
でも 僕には止められない 君と恋に落ちることが
留まるべきだろうか それは罪なことだろうか
川が流れて海に注ぐように
ダーリン そうなるものなんだ
物事はそうなる運命なんだ
僕の手をとって 僕の人生をすべて受け入れて
だって 君を好きにならずにいられないから…
この曲の出だし“Wise men say only fools rush in…”という一節が、「恋に突き進むなんて愚か者だけがすることと賢者は言うけれど、僕は…」という、前稿の“FOOLS RUSH IN”の格言(天使も恐れるところへ愚者は飛び込む=盲蛇におじず)から来ていることがお分かりであろう。
前稿からの連想というのはこういうことであった。
どことなく懐かしさのある曲である。
作者としてジョージ・ワイス、ヒューゴ・ペレッティ、ルイジ・クレアトーレの3人の名前がクレジットされている。
ワイスはサッチモの『この素晴らしき世界』をジョージ・ダグラス(大物音楽プロデューサーであったボブ・シールの変名)と共作したことで知られる。
どこかで聞いたことがあるような感じを抱かせる曲だという印象ももっともなハナシで、実はフランスの作曲家(実はドイツ人)ジャン・ポール・マルティーニが書いた歌曲“愛の喜び”(PLAISIR D'AMOUR‐1780)が原曲なのである。
この原曲は多くの人が一度は耳にしたことがあると思うが、まずは名ソプラノ、エリザベート・シュワルツコップの歌で聴いてみよう(こちら)。
余談だが、シュワルツコップは蚤助の高校の音楽教師(女性)が自分のアイドルだというので、授業中にレコードを無理やり聴かされた歌手なので名前だけは頭に刷り込まれていた(笑)。
当時はシュワルツコップの良さが全く分からなかった蚤助だが、近頃ではその美声の素晴らしさに感服している。
ちなみに、“愛の喜び”はその題名とは裏腹に「愛の喜びは長続きしない、苦しみだけが長く続く…」という不実な恋人のことを嘆くもので、タイトルとメロディの美しさに惹かれて結婚披露宴のBGMに使ったりすると何か支障が出るかも知れない…(笑)。
“CAN'T HELP FALLING IN LOVE”の“Can't help doing”は学校で習ったね。
レイ・チャールズの名曲“I CAN'T STOP LOVING YOU”(愛さずにはいられない)の“Can't stop doing”もそうだが、それぞれ“help”、“stop”に続く動詞は“ing”になる。
蚤助はこの二曲のタイトルを知って覚えたのだ(笑)。
また、“ダーリン、そうなるものなんだ、物事はそうなる運命なんだ”と訳したところは“Darling, so it goes, some things are meant to be”で、この“Meant to be”は「そういうことになっている」とか「そういう運命だ」という感じだろうか。
他のいろいろな洋楽の歌詞にも出てくる表現である。
最後の“For I can't help falling in love with you”の“for”の使い方は、原因の説明というべきもので、「というのは〜だから」という感じである。
つまり、この“for”以下の事が原因で前の出来事が生じたということなのだが、“A, For B”という文では「“B”だったから“A”になった」と直接的な言い方ではなく「“A”になった、だって“B”なんだもん」という軽いニュアンスだと思う。
歌詞に即して言えば、「僕の手をとって、僕の人生も一緒に、だって君が好きなんだもの…」で、こういう感じだとなかなか初心で可愛い雰囲気が出てくるではないか(笑)。
アンディ・ウィリアムス、アル・マルティーノ、スタイリスティックス、UB40、そして何とボブ・ディラン(!)まで、いろいろなアーティストがカヴァーしている。
以前こちらでもとりあげた、65年のウィ・ファイヴの歌を聴いてみよう(こちら)。
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なお、物の本には“好きにならずにいられない”は、映画『ブルー・ハワイ』のために書かれた曲だとあるが、ウィリアム・ワイラーが監督しオリヴィア・デ・ハヴィランドがアカデミー主演女優賞を獲得した49年の『女相続人』(The Heiress)のサウンドトラックでインスト・ヴァージョンが使われていたような記憶がある。
もっともそれはマルティーニの原曲“愛の喜び”であったかもしれない…。
だが、この曲をポピュラー・スタンダード曲にしたのはエルヴィス・プレスリーであることは間違いない(こちら)。
日本人が最も好きなエルヴィス・ナンバーだという人もいるほど、このキングの歌はしっとりと情感豊かである。
好きなこと好きな人とはまだ出来ず(蚤助)
エルヴィスのバラードの傑作“CAN'T HELP FALLING IN LOVE”(好きにならずにいられない)である。
クラシック至上主義者やジャズキチなどはエルヴィス・プレスリーの名前が出ただけで敬遠してしまうかもしれないが、蚤助は音楽に関しては雑食系なので全く拒否反応はない(笑)。
彼の主演映画は、コンサート・ライヴをそのまま映画化したいわゆるオン・ステージものを除いても、1956年の『やさしく愛して』からおよそ30本くらいあるらしい。
彼は除隊後の60年から61年にかけて『GI・ブルース』、『燃える平原児』、『嵐の季節』など映画に積極的に出演し始めたが、第8作目にあたる『ブルー・ハワイ』(ノーマン・タウログ監督‐1961)は、劇中歌にとどまらず映画の出来も良く、なかなか楽しめる作品であった。

劇中“ブルー・ハワイ”、“ハワイアン・ウェディング・ソング”、“ロカ・フラ・ベイビー”などの佳曲が出てくるが、中でも一番のヒットとなったのが“好きにならずにいられない”(CAN'T HELP FALLING IN LOVE)であった。
後年、エルヴィスのステージのクロージング・テーマともなった重要な曲である。
映画ではオルゴールから流れてくるメロディに合わせてエルヴィスが歌うという粋な演出がなされていた。
Wise men say only fools rush in
But I can't help falling in love with you…
賢人は言う 愚か者だけが事を急ぐと
でも 僕には止められない 君と恋に落ちることが
留まるべきだろうか それは罪なことだろうか
川が流れて海に注ぐように
ダーリン そうなるものなんだ
物事はそうなる運命なんだ
僕の手をとって 僕の人生をすべて受け入れて
だって 君を好きにならずにいられないから…
この曲の出だし“Wise men say only fools rush in…”という一節が、「恋に突き進むなんて愚か者だけがすることと賢者は言うけれど、僕は…」という、前稿の“FOOLS RUSH IN”の格言(天使も恐れるところへ愚者は飛び込む=盲蛇におじず)から来ていることがお分かりであろう。
前稿からの連想というのはこういうことであった。
どことなく懐かしさのある曲である。
作者としてジョージ・ワイス、ヒューゴ・ペレッティ、ルイジ・クレアトーレの3人の名前がクレジットされている。
ワイスはサッチモの『この素晴らしき世界』をジョージ・ダグラス(大物音楽プロデューサーであったボブ・シールの変名)と共作したことで知られる。
どこかで聞いたことがあるような感じを抱かせる曲だという印象ももっともなハナシで、実はフランスの作曲家(実はドイツ人)ジャン・ポール・マルティーニが書いた歌曲“愛の喜び”(PLAISIR D'AMOUR‐1780)が原曲なのである。
この原曲は多くの人が一度は耳にしたことがあると思うが、まずは名ソプラノ、エリザベート・シュワルツコップの歌で聴いてみよう(こちら)。
余談だが、シュワルツコップは蚤助の高校の音楽教師(女性)が自分のアイドルだというので、授業中にレコードを無理やり聴かされた歌手なので名前だけは頭に刷り込まれていた(笑)。
当時はシュワルツコップの良さが全く分からなかった蚤助だが、近頃ではその美声の素晴らしさに感服している。
ちなみに、“愛の喜び”はその題名とは裏腹に「愛の喜びは長続きしない、苦しみだけが長く続く…」という不実な恋人のことを嘆くもので、タイトルとメロディの美しさに惹かれて結婚披露宴のBGMに使ったりすると何か支障が出るかも知れない…(笑)。
“CAN'T HELP FALLING IN LOVE”の“Can't help doing”は学校で習ったね。
レイ・チャールズの名曲“I CAN'T STOP LOVING YOU”(愛さずにはいられない)の“Can't stop doing”もそうだが、それぞれ“help”、“stop”に続く動詞は“ing”になる。
蚤助はこの二曲のタイトルを知って覚えたのだ(笑)。
また、“ダーリン、そうなるものなんだ、物事はそうなる運命なんだ”と訳したところは“Darling, so it goes, some things are meant to be”で、この“Meant to be”は「そういうことになっている」とか「そういう運命だ」という感じだろうか。
他のいろいろな洋楽の歌詞にも出てくる表現である。
最後の“For I can't help falling in love with you”の“for”の使い方は、原因の説明というべきもので、「というのは〜だから」という感じである。
つまり、この“for”以下の事が原因で前の出来事が生じたということなのだが、“A, For B”という文では「“B”だったから“A”になった」と直接的な言い方ではなく「“A”になった、だって“B”なんだもん」という軽いニュアンスだと思う。
歌詞に即して言えば、「僕の手をとって、僕の人生も一緒に、だって君が好きなんだもの…」で、こういう感じだとなかなか初心で可愛い雰囲気が出てくるではないか(笑)。
アンディ・ウィリアムス、アル・マルティーノ、スタイリスティックス、UB40、そして何とボブ・ディラン(!)まで、いろいろなアーティストがカヴァーしている。
以前こちらでもとりあげた、65年のウィ・ファイヴの歌を聴いてみよう(こちら)。

なお、物の本には“好きにならずにいられない”は、映画『ブルー・ハワイ』のために書かれた曲だとあるが、ウィリアム・ワイラーが監督しオリヴィア・デ・ハヴィランドがアカデミー主演女優賞を獲得した49年の『女相続人』(The Heiress)のサウンドトラックでインスト・ヴァージョンが使われていたような記憶がある。
もっともそれはマルティーニの原曲“愛の喜び”であったかもしれない…。
だが、この曲をポピュラー・スタンダード曲にしたのはエルヴィス・プレスリーであることは間違いない(こちら)。
日本人が最も好きなエルヴィス・ナンバーだという人もいるほど、このキングの歌はしっとりと情感豊かである。
好きなこと好きな人とはまだ出来ず(蚤助)