1930年代という古い時代に活躍したアイナー・アーロン・スワンは、サックス兼トランペット奏者で、ソングライターでもあった。
若死にしたせいか、彼の作品として知られているのはそんなに多くはないが、“When Your Lover Has Gone”はブルー・ラヴ・バラードの傑作のひとつとして今日まで歌い継がれている。
31年のワーナー映画“ブロンド・クレイジー”(邦題「腕の男」)の主題歌として書かれたものだそうだ。
ジェームズ・キャグニーとジョアン・ブロンデルが主演したコメディで、この二人がコンビを組んで大物のボスに対して詐欺をはたらく騒動を描いたものだったという。
そんな映画の内容とは違ってスワンが作詞・作曲したこの主題歌は、悲痛な失恋の歌で、ブロークン・ハートのナンバーとして最右翼に位置する名曲といってよいかもしれない。
曲が世に出た31年に、ジーン・オースティン、サッチモ、ベニー・グッドマン、ユービー・ブレイク、エセル・ウォーターズらが次々とレコーディングして人気曲となったという。
スイング時代からジャズの素材として人気のあった曲である。
WHEN YOUR LOVER HAS GONE
(Words & Music by Einar Aaron Swan/1931)
What good is the scheming, the planning and dreaming
That comes with each new love affair
The love that you cherish, so often might perish
And leave you with castles in air
計画をたてること、構想を練ること、夢見ること、
それは何と楽しいことだろう
それは 新しい愛の出来事とともにやって来る
慈しみ育てる愛は しばしば枯死してしまうことがある
そしてただ空想の世界に あなたを置きざりにしてしまう
When you're alone, who cares for starlit skies
When you're alone, the magic moonlight dies
At break dawn, there is no sunrise
When your lover has gone...
孤独な時には 誰が星明りの空を気にするだろうか
孤独な時には 美しい月光は消えてしまう
夜が明けても 太陽は昇ってこない
愛する人が行ってしまったら
何と寂しい時間だろう 夕暮れの影がよみがえる
何と寂しい時間だろう 名残り惜しげな思い出とともに
枯れてしまった花のように 人生に意味があろうはずもない
愛する人が行ってしまったら...
原詞は韻を踏んだなかなか格調の高いものだが、蚤助の能力ではうまく訳出できなかった。
ただ、たとえ恋をしたとしても、結局は辛さが残るだけだと、多少皮肉っぽく囁きかけている内容であるらしいことはご理解いただけるだろう。
タイトルからも察せられるように、この歌、非常に珍しいケースだと思うが、恋人を失った本人ではなく、第三者が失恋した人の気持ちを語っていて、他の多くの失恋ソングとは一線を画している。
ただ、蚤助としては、一言、余計なお世話だと言っておきたい(笑)。
やはり、何といってもシナトラのしみじみとした語り口がいい。
彼は何度か録音しているが、これは55年のもので編曲と指揮をしているのがご存じネルソン・リドル。
シナトラのこの録音のちょうど30年後(85年)にそのリドルが、ロック娘だったリンダ・ロンシュタットのためにアレンジと指揮をして、大評判をとったのがこの録音。リドルとのコラボレーションを得て、彼女はリンダ嬢からリンダ姐と大人の歌手に脱皮していった。
この歌はサラ・ヴォーンの得意曲であり、知る限り3回録音している。
しかも、いずれも他の歌手ともちょっと違うアプローチをしているのだ。
まず61年の録音は、ピアノ伴奏のみのバラードスタイルで始め、やがてラテン・リズムと4ビートを巧みに織り交ぜてスイング・ナンバーに仕上げている。
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81年の録音は、久しぶりのベイシー楽団との共演。
ドラムスの小粋なブラッシュとピアノの伴奏で1コーラス聴かせたかと思うと、スキャットに移ってリスナーを驚かせ、後半はベイシー楽団の生気あふれた伴奏を得てぐいぐいと迫る。
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そしてサラの歌で一番のお気に入りは、78年のオスカー・ピーターソン・ビッグ4との共演盤だ。
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この曲は、ルイ・ベルソンのドラムスとのデュエットだが、素晴らしいドラミングの刻むリズムに乗った大胆なスキャットを披露し実にスリリングな歌唱である。
いずれにしても、原曲に関係なくあくまでも自らのパフォーマンスの素材として自分の解釈を展開させるあたり、サラ・ヴォーンという歌手の凄味を感じさせる。
恋人が去ってしまったら、たいていの人は傷つき悲しむだろうということで、こういう失恋ソングが生まれるわけだが、中にはこんな猛者がいるかもしれない。
アハハハハふられましたとあっけらかん(蚤助)
若死にしたせいか、彼の作品として知られているのはそんなに多くはないが、“When Your Lover Has Gone”はブルー・ラヴ・バラードの傑作のひとつとして今日まで歌い継がれている。
31年のワーナー映画“ブロンド・クレイジー”(邦題「腕の男」)の主題歌として書かれたものだそうだ。
ジェームズ・キャグニーとジョアン・ブロンデルが主演したコメディで、この二人がコンビを組んで大物のボスに対して詐欺をはたらく騒動を描いたものだったという。
そんな映画の内容とは違ってスワンが作詞・作曲したこの主題歌は、悲痛な失恋の歌で、ブロークン・ハートのナンバーとして最右翼に位置する名曲といってよいかもしれない。
曲が世に出た31年に、ジーン・オースティン、サッチモ、ベニー・グッドマン、ユービー・ブレイク、エセル・ウォーターズらが次々とレコーディングして人気曲となったという。
スイング時代からジャズの素材として人気のあった曲である。
WHEN YOUR LOVER HAS GONE
(Words & Music by Einar Aaron Swan/1931)
What good is the scheming, the planning and dreaming
That comes with each new love affair
The love that you cherish, so often might perish
And leave you with castles in air
計画をたてること、構想を練ること、夢見ること、
それは何と楽しいことだろう
それは 新しい愛の出来事とともにやって来る
慈しみ育てる愛は しばしば枯死してしまうことがある
そしてただ空想の世界に あなたを置きざりにしてしまう
When you're alone, who cares for starlit skies
When you're alone, the magic moonlight dies
At break dawn, there is no sunrise
When your lover has gone...
孤独な時には 誰が星明りの空を気にするだろうか
孤独な時には 美しい月光は消えてしまう
夜が明けても 太陽は昇ってこない
愛する人が行ってしまったら
何と寂しい時間だろう 夕暮れの影がよみがえる
何と寂しい時間だろう 名残り惜しげな思い出とともに
枯れてしまった花のように 人生に意味があろうはずもない
愛する人が行ってしまったら...
原詞は韻を踏んだなかなか格調の高いものだが、蚤助の能力ではうまく訳出できなかった。
ただ、たとえ恋をしたとしても、結局は辛さが残るだけだと、多少皮肉っぽく囁きかけている内容であるらしいことはご理解いただけるだろう。
タイトルからも察せられるように、この歌、非常に珍しいケースだと思うが、恋人を失った本人ではなく、第三者が失恋した人の気持ちを語っていて、他の多くの失恋ソングとは一線を画している。
ただ、蚤助としては、一言、余計なお世話だと言っておきたい(笑)。
やはり、何といってもシナトラのしみじみとした語り口がいい。
彼は何度か録音しているが、これは55年のもので編曲と指揮をしているのがご存じネルソン・リドル。
シナトラのこの録音のちょうど30年後(85年)にそのリドルが、ロック娘だったリンダ・ロンシュタットのためにアレンジと指揮をして、大評判をとったのがこの録音。リドルとのコラボレーションを得て、彼女はリンダ嬢からリンダ姐と大人の歌手に脱皮していった。
この歌はサラ・ヴォーンの得意曲であり、知る限り3回録音している。
しかも、いずれも他の歌手ともちょっと違うアプローチをしているのだ。
まず61年の録音は、ピアノ伴奏のみのバラードスタイルで始め、やがてラテン・リズムと4ビートを巧みに織り交ぜてスイング・ナンバーに仕上げている。

81年の録音は、久しぶりのベイシー楽団との共演。
ドラムスの小粋なブラッシュとピアノの伴奏で1コーラス聴かせたかと思うと、スキャットに移ってリスナーを驚かせ、後半はベイシー楽団の生気あふれた伴奏を得てぐいぐいと迫る。

そしてサラの歌で一番のお気に入りは、78年のオスカー・ピーターソン・ビッグ4との共演盤だ。

この曲は、ルイ・ベルソンのドラムスとのデュエットだが、素晴らしいドラミングの刻むリズムに乗った大胆なスキャットを披露し実にスリリングな歌唱である。
いずれにしても、原曲に関係なくあくまでも自らのパフォーマンスの素材として自分の解釈を展開させるあたり、サラ・ヴォーンという歌手の凄味を感じさせる。
恋人が去ってしまったら、たいていの人は傷つき悲しむだろうということで、こういう失恋ソングが生まれるわけだが、中にはこんな猛者がいるかもしれない。
アハハハハふられましたとあっけらかん(蚤助)