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Channel: ただの蚤助「けやぐの広場」~「けやぐ」とは友だち、仲間、親友という意味あいの津軽ことばです
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#674: 青い影

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前稿の絡みで思い出したのが、プロコル・ハルムの「青い影」(A Whiter Shade Of Pale‐1967)である。
マシュー・フィッシャーが奏でるオルガンの荘重なイントロからして印象的だった。
バッハの「管弦楽組曲第3番」の「G線上のアリア」をアダプトしたものだといわれている。

よく知られているように、ユーミンこと荒井由実(現・松任谷由実)が曲を自作するきっかけとなったのが、この「青い影」を聴いたことだった。彼女は、2012年になって、そのプロコル・ハルムと共演し「青い影」を歌った。
そういえば、彼女のデビュー作品「ひこうき雲」の曲のムードは「青い影」の曲調に似ていないこともない。


また、山下達郎は、ラジオで「青い影」を聴いて、即レコード・ショップへ走り、購入したその日のうちに100回は聴いたという。
ともかく、日本のポピュラー音楽にも大きな影響を与えた曲であった。

キース・リードの書いた難解な歌詞に乗って、ゲイリー・ブルッカーのソウルフルなヴォーカルがリスナーの心を捉えた。
ディスコ全盛のころ、チークタイムの定番曲としてよく使われたほか、N自動車のCMソングとなったこともあってか、日本人にも非常に馴染みの深い曲である。

この歌が出版されてから早くも半世紀近い歳月が流れたが、2005年、「青い影」で素晴らしいオルガンを聴かせたマシュー・フィッシャーが作曲者ゲイリー・ブルッカーを相手どって著作権の訴訟を起こした。
フィッシャーはブルッカーの書いたオリジナルのメロディに重要な改変を加えたとして、作曲家としての著作権を主張したのである。
一方、ブルッカーはフィッシャーがプロコル・ハルムに加入する以前に作曲されていて、フィッシャーは単にアレンジをしただけだと主張した。
この法廷闘争は、二転三転の後、結局フィッシャーの権利が認められる形で終止符が打たれた。
したがって、現在では、この曲の作曲者としてゲイリー・ブルッカーとマシュー・フィッシャーの名前がクレジットされることになっている。

ところでキース・リードの書いた歌詞の方だが、今なおこの歌の内容についてあれこれと議論されているようだ。世界中で百家争鳴の議論がなされていると言って過言ではない。
なかなか小難しくて一筋縄ではいきそうにもないのだ。
所詮、蚤助の能力では太刀打ちできないのだが、どんな歌だったのか、ちょっと解読を試みることにした。

A WHITER SHADE OF PALE (1967)
(Words by Keith Reid / Music by Gary Brooker & Matthew Fisher)

We skipped the light fandango, turned cartwheels across the floor
I was feeling kind of seasick, but the crowd called out for more
The room was humming harder as the ceiling flew away
When we called out for another drink, the waiter brought a tray
And so it was later, as the miller told his tale that her face
at first just ghostly turned a whiter shade of pale

She said, "There is no reason and the truth is plain to see"
But I wandered through my playing cards and would not let her be
one of 16 vestal virgins who were leaving for the coast
And although my eyes were open they might just as well have been closed
And so it was later, as the miller told his tale that her face
at first just ghostly turned a whiter shade of pale
まずは、冒頭の We skipped the light fandango, turned cartwheels across the floor だが、ファンダンゴはスペイン発祥の男女ペアで踊るフラメンコで、ギター、手拍子、カスタネットで伴奏する踊りである。その様子から「馬鹿騒ぎ」という意味もあるようだ。また、cartwheels は車輪のことだが、側転という意味もある。悩ましいところだが、おそらく「僕らは軽くファンダンゴを踊り、フロアを転げまわった」くらいの意味にとっておきたい。

次の3行は「僕は船酔いのような気分だったが、皆はもっとやれと叫んだ。天井が飛んで行ってしまったように部屋が強くぶんぶんと鳴りだした。僕らが飲み物のお代わりと叫んだら、ウェイターがトレイを持ってきた」だろうか。

And so it was that~ のところは、miller (粉屋、製粉業者)というのに何か深い意味が隠されていそうだがよく分からないので、「そして少し経って、製粉業者が身の上話をすると、最初は幽霊のようだった彼女の顔は蒼白になっていった」と直訳しておこう。

間奏の後の She said 以下は「彼女は言った、理由なんかないわ、見てのとおりよ」というところか。

次は少し長いセンテンス、 But I wandered through my playing cards and would not let her be one of 16 vestal virgins who were leaving for the coast という部分。
my playing cards までの前半部は「でも僕は自分のカード遊びがどうなるかが気になっていた」。そして、次の 16 vestal virgins というのが、キーポイントかもしれない。
vestal virgins(ウェスタの乙女)というのは、ローマ神話の家庭と炉の女神ウェスタ(英語ではヴェスタ)の祭壇の聖火を護った巫女のことで、その意義については、こちらを参照願いたい。
で、後半部は「彼女を岸に向って去っていく16人のウェスタの乙女の一人にさせたくなかった」という風になる。

そして最後は「僕の目は開いているのに、まるで閉じているかのようだった」だろうか。

辞書を頼りにしているだけでは、その言葉の背景にある諸々の意義や事象について理解が不足しているので、一向にわけが分からない歌詞だ。

こうしたキース・リードの詩は、当時の時代背景を反映したサイケデリック調で、実に抽象的である。ある意味、ドラッグの世界と断言してしまってもいいかもしれない。
結局、この歌、何がいいたいのかよく分からなかったというのが蚤助の結論だが、クラシカルな曲調のオルガンのリフをロックの世界に持込み、リスナーに強烈な印象を与えた名曲であることだけは確かである。
生前のジョン・レノンは「人生においてベスト3に入る曲」と語っていたそうだ。


なお、邦題は「青い影」だが、ここでの Shade は影というよりも、色の濃淡、色合い、色調、明暗とかの意で、原題は「蒼白」とか「白っぽい色合い」という意味になるようだ。

影踏めぬ距離でトラブルない二人  蚤助

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