前稿の“ALL THE WAY”には“Deeper than the deep blue sea, that's how deep it goes if it's real”(深い海よりももっと深く 本当の愛ならそれくらい深くなければ)という歌詞が出てくる。
蚤助は、これで必ずといってよいほど別のスタンダード曲“How Deep Is The Ocean”を連想してしまうのである。「君を想う気持ちは海よりも深く、山よりも高い」などという歌詞と似通っているところがあるからだ。さらにそのうえ“How High The Moon”という曲も連想するのだ。というのも“How Deep Is The Ocean”のフルタイトルが“How Deep Is The Ocean (How Hgh Is The Sky)”だというのがおそらく影響しているのだろう。
歌詞は“I'll tell you no lie”という一行を除けば、すべて疑問形だけで構成されているという非常に珍しいものである。
HOW DEEP IS THE OCEAN (HOW HIGH IS THE SKY) (1932)
(Words & Music by Irving Berlin)
How can I tell you what is in my heart?
How can I measure each and every part?
How can I tell you how much I love you?
How can I measure just how much I do?
How much do I love you?
I'll tell you no lie
How deep is the ocean?
How high is the sky?
How many times a day do I think of you?
How many roses are sprinkled with dew?
How far would I travel to be where you are?
How far is the journey from here to a star?
And if I ever lost you, how much would I cry?
How deep is the ocean?
How high is the sky?
私の心の中のことをいかにして君に伝えることが出来ようか?
それらのひとつひとつをいかに計ることが出来ようか?
君をどれだけ愛しているかいかに伝えられようか?
どれくらい愛しているか計ることが出来ようか?
君をどれだけ愛しているだろうか?
嘘は言わない
海はどれだけ深いだろうか?
空はどれだけ高いだろうか?
日に何度君のことを思うのだろうか?
どれだけのバラが朝露に濡れるのだろうか?
君のいる場所まではどれだけ遠い道のりなのだろうか?
ここから星までどんなに長い旅をしなければならないのだろうか?
そしてもし君を失ってしまったら どれだけ嘆き悲しむだろうか?
海はどれだけ深いだろうか?
空はどれだけ高いだろうか?
作者のアーヴィング・バーリンは、“Alexander's Ragtime Band”(1911)、“What'll I Do?”(1924)、“Always”(1925)、“Blue Skies”(1926)、“God Bless The America”(1938)、“White Christmas”(1942)などの多くの名曲のほか、「アニーよ銃を取れ」(Annie Get Your Gun)などのミュージカル作品を世に出したアメリカの大作曲家である。
1929年の大恐慌の前年にバーリンは、生まれて間もない男の子を亡くした。失意の日々を送るうちに作曲家としての自信も失ったのである。バーリン自身は、この曲を傑作とも思わずお蔵入りさせてしまったのだが、1932年にこれに手を入れて新曲として世に出した。
もちろん普通の男女の愛を歌ったラヴ・ソングとして聴くことも可能だが、もっと深い愛を歌っているものではなかろうか。
特に、“How far would I travel to be where you are? / How far is the journey from here to a star? / And if I ever lost you, how much would I cry?”という部分を読むにつけ、愛する息子に贈るバーリンの惜別の歌ではないかと思ってしまうのだ。
たぶん、愛する者を亡くしたバーリンが立ち直り、前に向って一歩踏み出すきっかけとなった曲なのであろう。
人口に膾炙する決定的なヴァージョンというのはすぐに思いつかないのだが、バラードとしては極上の作品なので名演名唱は少なくない。
バーリン自身の手による歌詞がいささか大時代的であることもあり、逆にそれが古典的なスタイルで歌うビング・クロスビーなどがピッタリだ。
マイルス・デイヴィスの演奏は、今にも壊れそうな絶妙なリリシズムが最大の効果を挙げている。
ピアノでは、知る限り、ビル・エヴァンスのこの作品の右に出るものはないと思う。スコット・ラファロのベース、ポール・モチアンのドラムスとエヴァンス・トリオ最高の布陣だ。
悲しみの深さ喪服を脱いでから 蚤助
蚤助は、これで必ずといってよいほど別のスタンダード曲“How Deep Is The Ocean”を連想してしまうのである。「君を想う気持ちは海よりも深く、山よりも高い」などという歌詞と似通っているところがあるからだ。さらにそのうえ“How High The Moon”という曲も連想するのだ。というのも“How Deep Is The Ocean”のフルタイトルが“How Deep Is The Ocean (How Hgh Is The Sky)”だというのがおそらく影響しているのだろう。
歌詞は“I'll tell you no lie”という一行を除けば、すべて疑問形だけで構成されているという非常に珍しいものである。
HOW DEEP IS THE OCEAN (HOW HIGH IS THE SKY) (1932)
(Words & Music by Irving Berlin)
How can I tell you what is in my heart?
How can I measure each and every part?
How can I tell you how much I love you?
How can I measure just how much I do?
How much do I love you?
I'll tell you no lie
How deep is the ocean?
How high is the sky?
How many times a day do I think of you?
How many roses are sprinkled with dew?
How far would I travel to be where you are?
How far is the journey from here to a star?
And if I ever lost you, how much would I cry?
How deep is the ocean?
How high is the sky?
私の心の中のことをいかにして君に伝えることが出来ようか?
それらのひとつひとつをいかに計ることが出来ようか?
君をどれだけ愛しているかいかに伝えられようか?
どれくらい愛しているか計ることが出来ようか?
君をどれだけ愛しているだろうか?
嘘は言わない
海はどれだけ深いだろうか?
空はどれだけ高いだろうか?
日に何度君のことを思うのだろうか?
どれだけのバラが朝露に濡れるのだろうか?
君のいる場所まではどれだけ遠い道のりなのだろうか?
ここから星までどんなに長い旅をしなければならないのだろうか?
そしてもし君を失ってしまったら どれだけ嘆き悲しむだろうか?
海はどれだけ深いだろうか?
空はどれだけ高いだろうか?
作者のアーヴィング・バーリンは、“Alexander's Ragtime Band”(1911)、“What'll I Do?”(1924)、“Always”(1925)、“Blue Skies”(1926)、“God Bless The America”(1938)、“White Christmas”(1942)などの多くの名曲のほか、「アニーよ銃を取れ」(Annie Get Your Gun)などのミュージカル作品を世に出したアメリカの大作曲家である。
1929年の大恐慌の前年にバーリンは、生まれて間もない男の子を亡くした。失意の日々を送るうちに作曲家としての自信も失ったのである。バーリン自身は、この曲を傑作とも思わずお蔵入りさせてしまったのだが、1932年にこれに手を入れて新曲として世に出した。
もちろん普通の男女の愛を歌ったラヴ・ソングとして聴くことも可能だが、もっと深い愛を歌っているものではなかろうか。
特に、“How far would I travel to be where you are? / How far is the journey from here to a star? / And if I ever lost you, how much would I cry?”という部分を読むにつけ、愛する息子に贈るバーリンの惜別の歌ではないかと思ってしまうのだ。
たぶん、愛する者を亡くしたバーリンが立ち直り、前に向って一歩踏み出すきっかけとなった曲なのであろう。
人口に膾炙する決定的なヴァージョンというのはすぐに思いつかないのだが、バラードとしては極上の作品なので名演名唱は少なくない。
バーリン自身の手による歌詞がいささか大時代的であることもあり、逆にそれが古典的なスタイルで歌うビング・クロスビーなどがピッタリだ。
マイルス・デイヴィスの演奏は、今にも壊れそうな絶妙なリリシズムが最大の効果を挙げている。
ピアノでは、知る限り、ビル・エヴァンスのこの作品の右に出るものはないと思う。スコット・ラファロのベース、ポール・モチアンのドラムスとエヴァンス・トリオ最高の布陣だ。
悲しみの深さ喪服を脱いでから 蚤助