オープン(Open)を手元の国語辞典で引くと、「公開。おおっぴらなこと。開放。開店。開場。店びらき。オープンカー。公開競技」などと出ている。すでに日本語化している英語である。
映画の世界では屋外のセットや撮影のことを指すし、スポーツ競技会などでは出場資格に制限のない大会(全英オープン等)や特にプロ野球などではシーズン外の非公式試合のことだ。前あきの開襟シャツはオープンシャツだし、労組員であるなしにかかわらず雇用することができる労使間のルールはオープンショップだ。これはお店が開店しているという意味ではなかったのだよ、ワトソン君(笑)。また、むき出しのリール(巻き枠)に巻いて使う形式の録音テープはオープンリールといった。アナログ・オーディオ時代にはずいぶん活躍したものだ。さらにはオープン価格やオープンキャンパスなんていうのもある。
つい最近知ったのだが、電気回路が切断されている状態のことを「オープン」というそうだ。例えばスイッチやブレーカーがオフになっている、配線が切れている、ヒューズが飛んでいる(溶断)等の状態である。電気が接続されている状態ではなく、切れている状態を「オープン」というのが何だか可笑しくてとても印象に残った。
このように「オープン」という言葉は今や多岐にわたって使われるようになっている。ちょっと時間が経ってしまったが、平成23年7月のNHK文芸選評(川柳)に「オープン」という課題が出た。さて、どんな句が抜かれたか、結果如何? いざ、選句集のオープンである!
【平成23年7月 課題「オープン」 安藤波瑠・選】
明日の戸を想定外の手が開く 田中博美
原子炉を開けてみられぬもどかしさ 江藤光雄
被災地で客と抱き合う店開き 塩野谷明夫
家族して玉子砂糖の開店日 田中和正
外見てるオープンカフェは見られてる 恩田朔郎
銅像が産声あげる除幕式 松田順久
子を憂う開放的な夏休み 石田かね子
蓋開けて許し未だだと知るおかず 有元義人
選り好みしないで開ける自動ドア 桐生静子
この美声開けておきたいバスルーム 松原 実
オープンにしてから恋が褪せてくる 高橋寿久
カミさんが開けっ広げ困ります 恵美勇作
オープンにしている財布二重底 大前安子
ハラを割るふりが身につき自己嫌悪 山口 登
胸襟を開いてみれば皆ヒト科 山口由利子
わが身体全てオープン検診日 安宅和恵
退屈なドアは何時でも開けている 古野つとむ
猛暑なら家族みんなでアダムイブ 西垣和夫
玉手箱知らないうちに開いていた 岡本 恵
♪ ♪ ♪
メッセージわざと開いた日記帳 吉富 廣
テレショップわたしの財布開けにくる 高東八千代
開店のマーチに財布武者ぶるい 松島紀義
慎みを忘れたくなる熱帯夜 門村幸子
繕った糸がほつれてボロが出る 福嶋 裕
オープンな性格実は無神経 山本二郎
叩いても開かぬドアの倦怠期 神田耕平
携帯がことのすべてを自白する 伊藤石英
緞帳がくたびれてきたアンコール 北田のり子
道楽が店を開いた蕎麦処 嶋田富士雄
見せたくてインプラントが良く笑う 古志野雪太郎
コンビーフ開けそこなっていざペンチ 吉野健司
本当の性格が出る三次会 鈴木正実
正直が過ぎて揉めだす夫婦仲 越澤 孝
ハッカーにマル秘情報開示され 眞田幸村
偵察の顔も見えてる開店日 茂呂美津
大型の店が畑を街にする 黒崎和夫
封切って賞味期限に急かされる 小野桂仙
開店のセールに財布走り出す 鈴木忠利
出来るならマスクさせたい口がある 小野真澄
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蚤助は、素直に「開ける」と解した。これが晴れて入選の一句となったのだった。
プレゼント開けて喜ぶ演技力 蚤助
川柳は老若男女を問わずオープン参加ができる五七五の短詩だ。俳句のように花鳥風月など自然を詠むのではなく、基本は人間を詠む。しかも、季語だとか切れ字だとか、俳句特有の小難しいルールはない。弱者を攻撃したり差別的な内容のものでない限り、人間の心情や行動を観察して、滑稽や皮肉の衣をつけて、物事や人情の隠れた真実をつく。自由にどんな表現も許されるというまことにオープンな文芸なのだ。ところが、見たり読んだりするのは楽しいのだが、いざ作るとなるとこれがなかなか難しい。でもそこがまた楽しかったりするのが困る(笑)。
映画の世界では屋外のセットや撮影のことを指すし、スポーツ競技会などでは出場資格に制限のない大会(全英オープン等)や特にプロ野球などではシーズン外の非公式試合のことだ。前あきの開襟シャツはオープンシャツだし、労組員であるなしにかかわらず雇用することができる労使間のルールはオープンショップだ。これはお店が開店しているという意味ではなかったのだよ、ワトソン君(笑)。また、むき出しのリール(巻き枠)に巻いて使う形式の録音テープはオープンリールといった。アナログ・オーディオ時代にはずいぶん活躍したものだ。さらにはオープン価格やオープンキャンパスなんていうのもある。
つい最近知ったのだが、電気回路が切断されている状態のことを「オープン」というそうだ。例えばスイッチやブレーカーがオフになっている、配線が切れている、ヒューズが飛んでいる(溶断)等の状態である。電気が接続されている状態ではなく、切れている状態を「オープン」というのが何だか可笑しくてとても印象に残った。
このように「オープン」という言葉は今や多岐にわたって使われるようになっている。ちょっと時間が経ってしまったが、平成23年7月のNHK文芸選評(川柳)に「オープン」という課題が出た。さて、どんな句が抜かれたか、結果如何? いざ、選句集のオープンである!
【平成23年7月 課題「オープン」 安藤波瑠・選】
明日の戸を想定外の手が開く 田中博美
原子炉を開けてみられぬもどかしさ 江藤光雄
被災地で客と抱き合う店開き 塩野谷明夫
家族して玉子砂糖の開店日 田中和正
外見てるオープンカフェは見られてる 恩田朔郎
銅像が産声あげる除幕式 松田順久
子を憂う開放的な夏休み 石田かね子
蓋開けて許し未だだと知るおかず 有元義人
選り好みしないで開ける自動ドア 桐生静子
この美声開けておきたいバスルーム 松原 実
オープンにしてから恋が褪せてくる 高橋寿久
カミさんが開けっ広げ困ります 恵美勇作
オープンにしている財布二重底 大前安子
ハラを割るふりが身につき自己嫌悪 山口 登
胸襟を開いてみれば皆ヒト科 山口由利子
わが身体全てオープン検診日 安宅和恵
退屈なドアは何時でも開けている 古野つとむ
猛暑なら家族みんなでアダムイブ 西垣和夫
玉手箱知らないうちに開いていた 岡本 恵
♪ ♪ ♪
メッセージわざと開いた日記帳 吉富 廣
テレショップわたしの財布開けにくる 高東八千代
開店のマーチに財布武者ぶるい 松島紀義
慎みを忘れたくなる熱帯夜 門村幸子
繕った糸がほつれてボロが出る 福嶋 裕
オープンな性格実は無神経 山本二郎
叩いても開かぬドアの倦怠期 神田耕平
携帯がことのすべてを自白する 伊藤石英
緞帳がくたびれてきたアンコール 北田のり子
道楽が店を開いた蕎麦処 嶋田富士雄
見せたくてインプラントが良く笑う 古志野雪太郎
コンビーフ開けそこなっていざペンチ 吉野健司
本当の性格が出る三次会 鈴木正実
正直が過ぎて揉めだす夫婦仲 越澤 孝
ハッカーにマル秘情報開示され 眞田幸村
偵察の顔も見えてる開店日 茂呂美津
大型の店が畑を街にする 黒崎和夫
封切って賞味期限に急かされる 小野桂仙
開店のセールに財布走り出す 鈴木忠利
出来るならマスクさせたい口がある 小野真澄

蚤助は、素直に「開ける」と解した。これが晴れて入選の一句となったのだった。
プレゼント開けて喜ぶ演技力 蚤助
川柳は老若男女を問わずオープン参加ができる五七五の短詩だ。俳句のように花鳥風月など自然を詠むのではなく、基本は人間を詠む。しかも、季語だとか切れ字だとか、俳句特有の小難しいルールはない。弱者を攻撃したり差別的な内容のものでない限り、人間の心情や行動を観察して、滑稽や皮肉の衣をつけて、物事や人情の隠れた真実をつく。自由にどんな表現も許されるというまことにオープンな文芸なのだ。ところが、見たり読んだりするのは楽しいのだが、いざ作るとなるとこれがなかなか難しい。でもそこがまた楽しかったりするのが困る(笑)。