年明け早々、ピエール・ブーレーズ、デヴィッド・ボウイ、グレン・フライ、俳優のアラン・リックマンなど大物アーティストの訃報が次々と届いた。中でも、蚤助にとってずっしり重かったのがナタリー・コールの訃報だった。昨年の大みそかに亡くなったという。享年は65歳であった。ナット・キング・コールの愛娘で、ジャズ、ポップス、R&Bの垣根を越えたなかなかの実力派シンガーであった。合掌。
その昔、美空ひばりがナタリー・コールの持ち歌を歌いたいが難しくてうまく歌えないとぼやいていたと何かの本で読んだことがある。父親のナット・コールのレパートリーはひばりもレコーディングしていて、すばらしい歌唱を今でも聴くことができるが、ナタリーの方はもっとコンテンポラリーな感覚の歌手だったので、あのひばりにしてもちょっと手強かったのかもしれない。
ナタリーは、一時期、薬物依存症など自身の健康状態から不調の時期にあったが、91年に、最新録音技術を駆使して亡き父親とのデュエットを実現した。選んだ曲が父ナットのヒット曲「Unforgettable」だった。これで見事復活を果たしてグラミー賞を獲得したのである。
作者のアーヴィング・ゴードンは、エリントン・ナンバー「Prelude To A Kiss」の作詞者として知られる人。「Unforgettable」は彼が作曲も手がけた51年の作品である。映画やミュージカルとは関係のない曲であったが、ナット・キング・コールがレコーディングすると、同年末から52年にかけて大ヒットし、彼の代表的レパートリーのひとつとなった。彼の人間味あふれる歌唱が絶品だった。ナタリーのヴァーチャル・デュエットはこの父のヴァージョンを使ったものだ。
曲はA・B・A・B’の32小節形式だが、どんどん転調していくというユニークなコード進行を持った美しいバラードである。
UNFORGETTABLE (1951)
(Words & Music by Irving Gordon)
Unforgettable, that's what you are
Unforgettable though near or far
Like a song of love that clings to me
How the thought of you does things to me
Never before has someone been more
Unforgettable in every way
And forever more, that's how you'll stay
That's why, darling, it's incredible
That someone so unfogettable
Thinks that I am unfogetabble too...
忘れられない それがあなたという人
忘れられない そばにいても離れていても
頭から離れないラブソングのように
あなたを想う気持ちがどれほど大事なことか
これまでの誰よりも...
忘れられない どこにいても
永遠に あなたは心の中に居続ける
ダーリン 信じられないことだ
忘れることのできない人が
私を忘れられぬ人だと思っていることが...
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「忘れられないあなた。近くにいても遠くにいても。恋の歌がいつまでも心に残るように、あなたを想う私の心はときめく。あなたほど大切な人はいない。いつまでも忘れられない人。だから信じられない。忘れられないあなたが私のことを忘れられないと思っていることが‥」という内容で、忘れようとしても忘れられない情感を歌ったものだ。歌詞はどちらかといえば地味でシンプルなのだが、心に訴えかけてくるものを持っている。
「ラブソングのように」と歌詞にはあるけど、忘れられぬ人が「恋人」だとは言っていない。だから「忘れられない」をさまざまに解釈する余地を残している。ナタリーとナットのデュエットは娘と亡き父の関係という意味でも内容が当てはまる歌である。蚤助自身は、お盆やお彼岸のころに流れたりするとピッタリとくる歌だと思っている。故人を偲ぶ内容として理解しても差支えなさそうだからだ(笑)。
59年にはダイナ・ワシントンが歌ってリバイバル・ヒットした。
いずれにしても歌唱力が問われそうな歌であることは確かで、このダイナの歌とやはりナット・コールが本命であろう。
「アンフォゲッタブル」「忘れられない」というのは、なかなか愛情のあふれる情感だが、人間、時として「忘れる」こともなくては脳みそのメモリーがパンクしてしまうかもしれない(ここで「近頃物忘れがひどいくせに、よく言うよ!」という陰の声あり)。ということで本日の一句。
都合よく忘れてあげる思いやり
その昔、美空ひばりがナタリー・コールの持ち歌を歌いたいが難しくてうまく歌えないとぼやいていたと何かの本で読んだことがある。父親のナット・コールのレパートリーはひばりもレコーディングしていて、すばらしい歌唱を今でも聴くことができるが、ナタリーの方はもっとコンテンポラリーな感覚の歌手だったので、あのひばりにしてもちょっと手強かったのかもしれない。
ナタリーは、一時期、薬物依存症など自身の健康状態から不調の時期にあったが、91年に、最新録音技術を駆使して亡き父親とのデュエットを実現した。選んだ曲が父ナットのヒット曲「Unforgettable」だった。これで見事復活を果たしてグラミー賞を獲得したのである。
作者のアーヴィング・ゴードンは、エリントン・ナンバー「Prelude To A Kiss」の作詞者として知られる人。「Unforgettable」は彼が作曲も手がけた51年の作品である。映画やミュージカルとは関係のない曲であったが、ナット・キング・コールがレコーディングすると、同年末から52年にかけて大ヒットし、彼の代表的レパートリーのひとつとなった。彼の人間味あふれる歌唱が絶品だった。ナタリーのヴァーチャル・デュエットはこの父のヴァージョンを使ったものだ。
曲はA・B・A・B’の32小節形式だが、どんどん転調していくというユニークなコード進行を持った美しいバラードである。
UNFORGETTABLE (1951)
(Words & Music by Irving Gordon)
Unforgettable, that's what you are
Unforgettable though near or far
Like a song of love that clings to me
How the thought of you does things to me
Never before has someone been more
Unforgettable in every way
And forever more, that's how you'll stay
That's why, darling, it's incredible
That someone so unfogettable
Thinks that I am unfogetabble too...
忘れられない それがあなたという人
忘れられない そばにいても離れていても
頭から離れないラブソングのように
あなたを想う気持ちがどれほど大事なことか
これまでの誰よりも...
忘れられない どこにいても
永遠に あなたは心の中に居続ける
ダーリン 信じられないことだ
忘れることのできない人が
私を忘れられぬ人だと思っていることが...

「忘れられないあなた。近くにいても遠くにいても。恋の歌がいつまでも心に残るように、あなたを想う私の心はときめく。あなたほど大切な人はいない。いつまでも忘れられない人。だから信じられない。忘れられないあなたが私のことを忘れられないと思っていることが‥」という内容で、忘れようとしても忘れられない情感を歌ったものだ。歌詞はどちらかといえば地味でシンプルなのだが、心に訴えかけてくるものを持っている。
「ラブソングのように」と歌詞にはあるけど、忘れられぬ人が「恋人」だとは言っていない。だから「忘れられない」をさまざまに解釈する余地を残している。ナタリーとナットのデュエットは娘と亡き父の関係という意味でも内容が当てはまる歌である。蚤助自身は、お盆やお彼岸のころに流れたりするとピッタリとくる歌だと思っている。故人を偲ぶ内容として理解しても差支えなさそうだからだ(笑)。
59年にはダイナ・ワシントンが歌ってリバイバル・ヒットした。
いずれにしても歌唱力が問われそうな歌であることは確かで、このダイナの歌とやはりナット・コールが本命であろう。
「アンフォゲッタブル」「忘れられない」というのは、なかなか愛情のあふれる情感だが、人間、時として「忘れる」こともなくては脳みそのメモリーがパンクしてしまうかもしれない(ここで「近頃物忘れがひどいくせに、よく言うよ!」という陰の声あり)。ということで本日の一句。
都合よく忘れてあげる思いやり