前稿からのつながりである。
リチャード・ギア主演の82年の映画「愛と青春の旅だち」(An Officer And A Gentleman)は、怠惰な生活から抜け出すために海軍士官学校に入った若者が、訓練担当の鬼軍曹(ルイス・ゴセット・ジュニア)の厳しい教練のもとで、脱落者が続出する中、仲間との友情、自殺、愛の芽生えといった様々な出来事に直面しながら成長していく物語だった。卒業のシーンで、あれほど教練でしごいたリチャード・ギアに対し教官だった鬼軍曹が「少尉殿!」と敬礼をする場面で胸がいっぱいになった蚤助だが、さらに、最後に恋人のデブラ・ウィンガーを「お姫さま抱っこ」するところで感極まってしまった思い出の映画でもあった(笑)。
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監督のテイラー・ハックフォードは、製作費と時間の関係で、自分のお気に入りのアーティストであるヴァン・モリソンやダイア・ストレイツ等の既成曲を使ったが、映画の完成まであと少しのところまできたところで、エンド・タイトルにどうしても一曲ドラマティックなオリジナル曲が欲しいと言い出した。監督の意向を受け、作詞家のウィル・ジェニングスが、映画用にジャック・ニッチェとバフィー・セント・メリーが書いたインストルメンタルのBGMスコアに新しい歌詞をつけて完成したのが「Up Where We Belong」というバラード曲だった。
ハックフォードは、当初、ソロ歌手に歌わせるつもりで、ジェニファー・ウォーンズのマネージャーをしていた友人に声をかけたが、彼女の声はスイート過ぎて物足りなさを感じたという。そこで、コンサート・ツアーでちょうどアメリカに滞在していた英国のロックシンガー、ジョー・コッカーに声をかけ、二人のベテランを組ませることにした。こうして渋い声のジョー・コッカーと美声のジェニファー・ウォーンズのデュエットが実現したわけだが、二人はこのときが初対面で、レコーディングも一日で終了したという。
この曲は、オスカー歌曲賞、グラミー賞を受賞したほか、83年に日本武道館で開催された東京音楽祭に出場したコッカーとウォーンズによって披露されグランプリを獲得している。ちなみにこのとき同点でグランプリを授与されたのはライオネル・リッチーだった。その後、ウォーンズの方は、87年の映画「ダーティ・ダンシング」の主題歌「Right Time Of The Night」を、やはり元ライチャス・ブラザースの低音担当だったビル・メドレーとデュエットし、再びオスカーとグラミー賞を獲得している。
UP WHERE WE BELONG (1982)
(Words by Will Jennings / Music by Jack Nitzsche & Buffy Sainte Marie)
Who knows what tomorrow brings in a world few hearts survive
All I know is the way I feel when it's real, I keep it alive
The road is long, there are mountains in our way
But we climb a step every day
Love lift us up where we belong
Where the eagles cry on a mountain high
Love lift us up where we belong
Far from the world we know up where the clear wind blow...
明日が何をもたらすかなんて誰が知るもんか
心がほとんど生き残れない世界では
その道は長く 私たちの行く手には山が聳え立つ
だけど登るんだ 毎日一歩ずつ
愛よ 私たちをいるべきところへ高めてほしい
山高く 鷲の鳴き声が響くところへ
愛よ 私たちをいるべきところへ高めてほしい
私たちが知る世界から遠く離れた 清らかな風が吹くところへ...
詞を書いたウィル・ジェニングスは、エリック・クラプトンの「Tears In Heaven」やセリーヌ・ディオンの「My Heart Will Go On」(タイタニック愛のテーマ)といった作品でも知られるが、深くてスケールの大きな歌詞はさすがである。
特に、エンディングに、
Time goes by, no time to cry
Life's you and I, alive today
時は過ぎて行く 泣く時間などない
人生とはあなたと私のこと 今日という日を生きているのだ
という強いメッセージ性を持つ歌詞が出てくるのが印象的な曲であった。
今年もヴァレンタイン・デイが近づいてきたが、青春の甘酸っぱいイメージの曲だけではなく、たまにはこうした深い情感とちょっと苦い味わいを持った曲を聴いてみるというのも一興ではなかろうか。
してあげた「のに」つけたから苦い味
リチャード・ギア主演の82年の映画「愛と青春の旅だち」(An Officer And A Gentleman)は、怠惰な生活から抜け出すために海軍士官学校に入った若者が、訓練担当の鬼軍曹(ルイス・ゴセット・ジュニア)の厳しい教練のもとで、脱落者が続出する中、仲間との友情、自殺、愛の芽生えといった様々な出来事に直面しながら成長していく物語だった。卒業のシーンで、あれほど教練でしごいたリチャード・ギアに対し教官だった鬼軍曹が「少尉殿!」と敬礼をする場面で胸がいっぱいになった蚤助だが、さらに、最後に恋人のデブラ・ウィンガーを「お姫さま抱っこ」するところで感極まってしまった思い出の映画でもあった(笑)。

監督のテイラー・ハックフォードは、製作費と時間の関係で、自分のお気に入りのアーティストであるヴァン・モリソンやダイア・ストレイツ等の既成曲を使ったが、映画の完成まであと少しのところまできたところで、エンド・タイトルにどうしても一曲ドラマティックなオリジナル曲が欲しいと言い出した。監督の意向を受け、作詞家のウィル・ジェニングスが、映画用にジャック・ニッチェとバフィー・セント・メリーが書いたインストルメンタルのBGMスコアに新しい歌詞をつけて完成したのが「Up Where We Belong」というバラード曲だった。
ハックフォードは、当初、ソロ歌手に歌わせるつもりで、ジェニファー・ウォーンズのマネージャーをしていた友人に声をかけたが、彼女の声はスイート過ぎて物足りなさを感じたという。そこで、コンサート・ツアーでちょうどアメリカに滞在していた英国のロックシンガー、ジョー・コッカーに声をかけ、二人のベテランを組ませることにした。こうして渋い声のジョー・コッカーと美声のジェニファー・ウォーンズのデュエットが実現したわけだが、二人はこのときが初対面で、レコーディングも一日で終了したという。
この曲は、オスカー歌曲賞、グラミー賞を受賞したほか、83年に日本武道館で開催された東京音楽祭に出場したコッカーとウォーンズによって披露されグランプリを獲得している。ちなみにこのとき同点でグランプリを授与されたのはライオネル・リッチーだった。その後、ウォーンズの方は、87年の映画「ダーティ・ダンシング」の主題歌「Right Time Of The Night」を、やはり元ライチャス・ブラザースの低音担当だったビル・メドレーとデュエットし、再びオスカーとグラミー賞を獲得している。
UP WHERE WE BELONG (1982)
(Words by Will Jennings / Music by Jack Nitzsche & Buffy Sainte Marie)
Who knows what tomorrow brings in a world few hearts survive
All I know is the way I feel when it's real, I keep it alive
The road is long, there are mountains in our way
But we climb a step every day
Love lift us up where we belong
Where the eagles cry on a mountain high
Love lift us up where we belong
Far from the world we know up where the clear wind blow...
明日が何をもたらすかなんて誰が知るもんか
心がほとんど生き残れない世界では
その道は長く 私たちの行く手には山が聳え立つ
だけど登るんだ 毎日一歩ずつ
愛よ 私たちをいるべきところへ高めてほしい
山高く 鷲の鳴き声が響くところへ
愛よ 私たちをいるべきところへ高めてほしい
私たちが知る世界から遠く離れた 清らかな風が吹くところへ...
詞を書いたウィル・ジェニングスは、エリック・クラプトンの「Tears In Heaven」やセリーヌ・ディオンの「My Heart Will Go On」(タイタニック愛のテーマ)といった作品でも知られるが、深くてスケールの大きな歌詞はさすがである。
特に、エンディングに、
Time goes by, no time to cry
Life's you and I, alive today
時は過ぎて行く 泣く時間などない
人生とはあなたと私のこと 今日という日を生きているのだ
という強いメッセージ性を持つ歌詞が出てくるのが印象的な曲であった。
今年もヴァレンタイン・デイが近づいてきたが、青春の甘酸っぱいイメージの曲だけではなく、たまにはこうした深い情感とちょっと苦い味わいを持った曲を聴いてみるというのも一興ではなかろうか。
してあげた「のに」つけたから苦い味