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Channel: ただの蚤助「けやぐの広場」~「けやぐ」とは友だち、仲間、親友という意味あいの津軽ことばです
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#521: 「青い」川柳

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先週末、台風並みに発達した低気圧が大雨と強風をもたらして、北方へ去って行ったあと、首都圏はとても良い天気となった。
花散らしの嵐は、その名の通り東京の桜を跡形もなくすっかり散らしてしまったが、今週はようやく本格的な春を感じられるような陽気が続くようだ。
花粉情報も主役はスギからヒノキに移っているようで、花粉症による艱難辛苦、七転八倒ももう少しの辛抱である(笑)。

この時期から木々は新緑になりはじめ、次第に空や海も次第にその青さを増していき、季節はやがて初夏から盛夏へと確実に巡っていくのである。


NHK文芸選評(川柳)で、私が句を抜いていただいて、拙句が初めて全国放送の電波に乗ったのは、今から7年前の平成18年9月のことだった。
選者は内田昌波さんで、そのときは「青い」という兼題だった。
9月にはミスマッチの題のような気がしたものである。

個人的に、「青い」といえば、むしろ、春から夏へかけてのイメージが強いのだが、暦の上とは異なり、まだまだ残暑が厳しいというのが9月の現実である。
実のところ、「青い」という言葉がどういう意味合いを持つのか、例によって、辞書等で調べてみる。

♪ ♪
「青い」
?「碧い」とも書いて、青色をしている、広く緑系統の色もいう。青い空、青いリンゴ、青松、青い畳、青信号、紺碧など。?「蒼い」とも書いて、顔に血の気がない、赤みが足りない。青白い、真っ青、青ざめる、蒼白など。?未熟な果実などが青いところから、人格・技能や振る舞いなどが未熟である。考えが青い、など。

辞書では大体こういう具合に説明されている。
この説明を頭の隅に置いておいて、平成18年9月の「青い」にはどんな作品が選ばれたのか、見てみることにしよう。



課題「青い」 内田昌波・選
まだ青い意見しっかり受け止める (濱村 淳)
植樹して地球に緑着てもらい (安田秋峰)
八起き目の空は青いと信じ込み (椎野 茂)
躓きを舗道割る芽に教えられ (柳ちよ女)
躓いて里が恋しくなるブルー (菅井京子)
病室の窓から見える空と杜(もり) (荒井典昭)
果てしないロマンが咲かす青いバラ (後藤洋子)
青空の広さで包む思いやり (中村輝子)
鉛筆の端を噛んでる青い意地 (島 香代)
青春を汗と涙の甲子園 (帯ひろし)
力んでも力んでもまだ青い芸 (川瀬伊津子)
サムライブルー染め直すオシム流 (島 友造)
理想論父の拳固で知る青さ (小鈴卓央)
まだ捨てず秘かに青い志 (樋口 眞)
青空へ諍いなどはもう忘れ (佐藤裕子)
再建へ青い主張に賭けてみる (竹中正幸)
領海に線など見えぬ青い海 (中谷照正)
古稀はまだ未熟明日へ汗を積む (小西章雄)
山幾つ超えても居ない青い鳥 (清井厚之)
悔いのない選択だった青い空 (森 昇)
♪ ♪ ♪
青い鳥うちは居心地いいらしい (岡本 恵)
老妻を若返らせる青畳 (福田仁兵衛)
まだ苦労知らぬ子の描く青写真 (関口カツ子)
まだ青い嘴だけど眼が本気 (山西酸及)
地引網青い空まで引いている (七宮 明)
青臭い議論にもある旬の味 (手塚正夫)
叩き台青い意見を置いてゆく (小山しげ幸)
青いなと言われた頃の自尊心 (谷田部富義)
雑念をそっと吸いとる青い空 (常田千吉)
宣誓の掌が青空を一掴み (小林笑楽)
チェックイン疲れを癒す青畳 (中田俊次)
少子化で国の青写真がやせる (松田順久)
抱いた子に青信号と促され (秋山滋造)
退院日真の青さを知った空 (竹鼻雅子)
少年の夢はみだした青写真 (村上ミツ子)
信号は青だ迷いがふっ切れる (高橋寿久)
親離れした子の自信まだ青い (鈴木和子)
青空に一坪野菜呼吸する (難波澄雄)
まだ青い意見核心ついてくる (植村和一)

内田昌波先生から抜いていただいた拙句は、まだまだ「青い」一句だったかもしれないが、私の作句のモチベーションを一気に高めた大事な一句でもあった。

板前の手で海にする青磁皿

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