何回目になったかはヒミツにしておくが、本日、すなわち4月5日は蚤助の誕生日である。何だか久方ぶりにオールディーズを聴きたい気分なのである。ということで選んだのはこれ…。
ギターが奏でるイントロに続き、リード・テナーのトニー・ウィリアムスが歌いだす。曲の冒頭のこの数秒間だけで胸がジーンと熱くなるポップス・ファンはかなりいるはずだ。いわずと知れたザ・プラターズの出世作であるとともに、ポップス史に残る名曲“Only You (And You Alone)”で、スロー・ドゥ・ワップの傑作である。
プラターズは53年に男性4人組で結成されたが、やがてオリジナル・メンバーのハーブ・リードのもとに、トニー・ウィリアムス、デヴィッド・リンチ、ポール・ロビ、そして紅一点ゾラ・テイラーが加わり男女混成5人組になった。55年の“Only You”の大ヒットから、61年にトニーとゾラが脱退するまでの足かけ6年間が彼らの黄金時代だった。
プラターズは、ナッキンコールとともに、最も白人ウケ、そして日本人ウケした黒人のアーティストだったといえよう。1955〜56年には7曲ものビッグ・ヒットを出した。特にリード・テナーのトニーのファルセット混じりの独特の唱法は一世を風靡した。その後はメンバーチェンジが頻繁に行われ、脱退したメンバーが新たにプラターズを名乗るなどして裁判沙汰にもなった。一時、プラターズを名乗るグループは全米に何組もあったという。50年代のロックンロール時代において最も洗練された黒人コーラスであった。
“Only You”は、作曲家でプラターズのプロデュースを手掛けたバック・ラムが作った曲(歌詞はアンデ・ランドの作)で、当初はマイナー・レーベルで発表した作品である。この時は全く注目されず、後にマーキュリー・レコードで再発売されたのだが、会社が宣伝に乗り気でなかったため、バック・ラムのスタッフが全米のラジオ局を訪ね、9か月間かけてプロモーションを行った結果、全米5位のビッグ・ヒットとなった。まさに、作者の作品へのこだわりと執念、血と汗が成功への扉を開いたのである。まずは、彼らの動画をこちらでどうぞ。
Only you can make all this world seem right
Only you can make the darkness bright
Only you and you alone can thrill me like you do
And fill my heart with love for only you…
君だけが この世をすべて正しいと思わせてくれる
君だけが 暗闇に輝きをもたらしてくれる
君だけが 君ひとりだけが 僕をこんなにときめかせてくれる
そして 僕の心は 君だけへの愛でいっぱいなんだ…
少々しつこいくらいに切々と恋人を賞賛するバラードだが、ちょっぴりロックンロールのテイストが隠し味になっているところがミソである。歌詞をよくみていくと、何だか「僕」の「君」に対する下心が透けて見えてきそうだ(笑)。
ポピュラー・ソングのタイトルは歌詞の中のフレーズの中からつけられることが多い。それは、曲に親しみをもたせセールスにつなげようという魂胆からくるものだろう。ある物好きなジャズファンが、1930〜40年代に生まれた主なジャズ・ソング500曲を調べたところ、およそ4割の歌は歌い出しの歌詞をそのままタイトルにしていたという。この“Only You”の場合は、歌い出しからこれでもかというほど“Only You”というタイトルフレーズを乱用している。数えてみると、全部で9回ほど“Only You”が出てくるが、これだけ続ければ曲名が忘れられることは決してないだろう(笑)。
![]()
(The Platters)
ただ“Only You”はプラターズの個性があまりにも強い歌なので、日本のキングトーンズのようにプラターズ路線の歌い方をするのがいわばお約束になっている。他の歌い方がしづらい曲なのだが、当時プラターズと競作としてリリースされたザ・ヒルトッパーズのヴァージョンがある(こちら)。白人コーラス・カルテットで非常に丁寧に歌っている。なお、映像ではメンバー全員、胸にWの文字をつけていて、まるで早稲田大学の学生のようだが、彼らはウェスタン・ケンタッキー州立大学(WKU)の学生バンド出身だったそうだ(笑)。彼らにはカリプソ・サウンドで「オールデイ&オールナイト、マリアンヌ」とほのぼのと歌う“Marianne”という57年のヒット曲もあった。また、76年には、ソフト&メロウなフィラデルフィア・ソウルのザ・スタイリスティックスが甘くて官能的なコーラスを聴かせた(こちら)。異色なのは、75年にヒットしたリンゴ・スターのヴァージョンで、ジョン・レノンに勧められて、カヴァーしたという。アレンジとギターがジョン、ニルソンがコーラスで参加するという豪華なメンバーのサポートで、リンゴらしい淡々とした持ち味を発揮、心が和む歌声を聴かせてくれる(こちら)。
余談になるが、マーキュリー・レコードはプラターズの宣伝にはまったく消極的だったが、この曲のヒットで態度が一変、プラターズを強力にバックアップする方針を打ち出すのである。プラターズのマネージメントもやっていたバック・ラムに、会社は“Only You”の人気が沸騰している時期に次作の準備を指示する。忙しいスケジュールの合間をぬい、ラムが滞在先のホテルのトイレで書いたのが“The Great Pretender”という曲だった。「僕はえらく見栄っ張り、道化師みたいに陽気に笑って…」と思いを寄せる女性の気を惹くための悲しい姿を歌った詞もラム自身が書いた。この歌詞がセンチメンタルなメロディに乗って大ヒット、プラターズに初の全米1位をもたらした。これが、ロックンロールが誕生した55年以降、黒人コーラス・グループが初めて全米1位を獲得した記念すべき作品となった(こちら)。
あらためて“Only You”を聴いてみると実に歌いやすい曲である。カラオケでも英語の歌で“My Way”なんかを聴かされるよりも、こちらの方が苦痛が少ない(笑)。それでは、小生も歌ってみるとするか、なーに、発音なんぞは気にすることはない、ワン・ツー・スリー・ハイ、♪お〜んりぃゆ〜…
君だけと何だお前も言われたか(蚤助)
ギターが奏でるイントロに続き、リード・テナーのトニー・ウィリアムスが歌いだす。曲の冒頭のこの数秒間だけで胸がジーンと熱くなるポップス・ファンはかなりいるはずだ。いわずと知れたザ・プラターズの出世作であるとともに、ポップス史に残る名曲“Only You (And You Alone)”で、スロー・ドゥ・ワップの傑作である。
プラターズは53年に男性4人組で結成されたが、やがてオリジナル・メンバーのハーブ・リードのもとに、トニー・ウィリアムス、デヴィッド・リンチ、ポール・ロビ、そして紅一点ゾラ・テイラーが加わり男女混成5人組になった。55年の“Only You”の大ヒットから、61年にトニーとゾラが脱退するまでの足かけ6年間が彼らの黄金時代だった。
プラターズは、ナッキンコールとともに、最も白人ウケ、そして日本人ウケした黒人のアーティストだったといえよう。1955〜56年には7曲ものビッグ・ヒットを出した。特にリード・テナーのトニーのファルセット混じりの独特の唱法は一世を風靡した。その後はメンバーチェンジが頻繁に行われ、脱退したメンバーが新たにプラターズを名乗るなどして裁判沙汰にもなった。一時、プラターズを名乗るグループは全米に何組もあったという。50年代のロックンロール時代において最も洗練された黒人コーラスであった。
“Only You”は、作曲家でプラターズのプロデュースを手掛けたバック・ラムが作った曲(歌詞はアンデ・ランドの作)で、当初はマイナー・レーベルで発表した作品である。この時は全く注目されず、後にマーキュリー・レコードで再発売されたのだが、会社が宣伝に乗り気でなかったため、バック・ラムのスタッフが全米のラジオ局を訪ね、9か月間かけてプロモーションを行った結果、全米5位のビッグ・ヒットとなった。まさに、作者の作品へのこだわりと執念、血と汗が成功への扉を開いたのである。まずは、彼らの動画をこちらでどうぞ。
Only you can make all this world seem right
Only you can make the darkness bright
Only you and you alone can thrill me like you do
And fill my heart with love for only you…
君だけが この世をすべて正しいと思わせてくれる
君だけが 暗闇に輝きをもたらしてくれる
君だけが 君ひとりだけが 僕をこんなにときめかせてくれる
そして 僕の心は 君だけへの愛でいっぱいなんだ…
少々しつこいくらいに切々と恋人を賞賛するバラードだが、ちょっぴりロックンロールのテイストが隠し味になっているところがミソである。歌詞をよくみていくと、何だか「僕」の「君」に対する下心が透けて見えてきそうだ(笑)。
ポピュラー・ソングのタイトルは歌詞の中のフレーズの中からつけられることが多い。それは、曲に親しみをもたせセールスにつなげようという魂胆からくるものだろう。ある物好きなジャズファンが、1930〜40年代に生まれた主なジャズ・ソング500曲を調べたところ、およそ4割の歌は歌い出しの歌詞をそのままタイトルにしていたという。この“Only You”の場合は、歌い出しからこれでもかというほど“Only You”というタイトルフレーズを乱用している。数えてみると、全部で9回ほど“Only You”が出てくるが、これだけ続ければ曲名が忘れられることは決してないだろう(笑)。

(The Platters)
ただ“Only You”はプラターズの個性があまりにも強い歌なので、日本のキングトーンズのようにプラターズ路線の歌い方をするのがいわばお約束になっている。他の歌い方がしづらい曲なのだが、当時プラターズと競作としてリリースされたザ・ヒルトッパーズのヴァージョンがある(こちら)。白人コーラス・カルテットで非常に丁寧に歌っている。なお、映像ではメンバー全員、胸にWの文字をつけていて、まるで早稲田大学の学生のようだが、彼らはウェスタン・ケンタッキー州立大学(WKU)の学生バンド出身だったそうだ(笑)。彼らにはカリプソ・サウンドで「オールデイ&オールナイト、マリアンヌ」とほのぼのと歌う“Marianne”という57年のヒット曲もあった。また、76年には、ソフト&メロウなフィラデルフィア・ソウルのザ・スタイリスティックスが甘くて官能的なコーラスを聴かせた(こちら)。異色なのは、75年にヒットしたリンゴ・スターのヴァージョンで、ジョン・レノンに勧められて、カヴァーしたという。アレンジとギターがジョン、ニルソンがコーラスで参加するという豪華なメンバーのサポートで、リンゴらしい淡々とした持ち味を発揮、心が和む歌声を聴かせてくれる(こちら)。
余談になるが、マーキュリー・レコードはプラターズの宣伝にはまったく消極的だったが、この曲のヒットで態度が一変、プラターズを強力にバックアップする方針を打ち出すのである。プラターズのマネージメントもやっていたバック・ラムに、会社は“Only You”の人気が沸騰している時期に次作の準備を指示する。忙しいスケジュールの合間をぬい、ラムが滞在先のホテルのトイレで書いたのが“The Great Pretender”という曲だった。「僕はえらく見栄っ張り、道化師みたいに陽気に笑って…」と思いを寄せる女性の気を惹くための悲しい姿を歌った詞もラム自身が書いた。この歌詞がセンチメンタルなメロディに乗って大ヒット、プラターズに初の全米1位をもたらした。これが、ロックンロールが誕生した55年以降、黒人コーラス・グループが初めて全米1位を獲得した記念すべき作品となった(こちら)。
あらためて“Only You”を聴いてみると実に歌いやすい曲である。カラオケでも英語の歌で“My Way”なんかを聴かされるよりも、こちらの方が苦痛が少ない(笑)。それでは、小生も歌ってみるとするか、なーに、発音なんぞは気にすることはない、ワン・ツー・スリー・ハイ、♪お〜んりぃゆ〜…
君だけと何だお前も言われたか(蚤助)