“MY ROMANCE”…
今回も、本ブログにこれまで何度も登場した作曲家リチャード・ロジャースと作詞家ロレンツ・ハートのコンビによる作品である。
♪
ミュージカル『ビリー・ローズのジャンボ』(BILLY ROSE'S JUMBO - 1935)のために書かれたナンバーで、翌年ポール・ホワイトマン楽団でヒットしたというのだが、これは調べたからわかったのであって、もちろんその演奏は知らない。
オリジナルのステージは、あまり人気が出ず半年もたずに上演打ち切りになったと記録にある。
ちなみに、ビリー・ローズというのはアメリカ芸能界の大興行師として名高く、この作品も彼の製作によるものだった。
♪ ♪
記憶にあるのは1962年にドリス・デイ主演で映画化された同名作品(邦題『ジャンボ』)の方で、華やかなサーカスを舞台に、確か巨象のジャンボが人気の一座の物語だったと思う。
監督が『上流社会』(HIGH SOCIETY)などを撮ったチャールズ・ウォルターズ、脚本はシドニー・シェルダンであった。
例えば、サーカスシーンなどは、舞台の上より映画の方がいろいろなシーンを撮って見せられるだろうし、その他おそらく映画化にあたって相当脚本に手が加えられたのではなかろうか。
映画の方はまずまずの出来だったと思う。
で、この映画版では“MY ROMANCE”をドリス・デイが歌った(“BILLY ROSE'S JUMBO/Original Soundtrack”)。
もちろん、当時まだ小学生だった私にこの歌の良さがわかったはずがない。
♪ ♪ ♪
この曲に真面目に向き合ったのはビル・エヴァンス・トリオの名盤中の名盤“WALTZ FOR DEBBY”を聴いてからのことである。
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(WALTZ FOR DEBBY/Bill Evans Trio)
エヴァンスのピアノに絡むスコット・ラファロのベース、控えめながらメリハリのついた的確なサポートを送るポール・モチアンのシンバル、この三者によるコラボレーションは繊細にしてスリリングでいつまでも心に残った。
それは高校生のときであったが、私はエヴァンス・トリオの演奏を通じて、この曲の美しいメロディを覚えたのである。
♪ ♪ ♪ ♪
ミュージカルのために書かれた曲なので、ヴァースがついている。
♪ 手にキスをしようなんて思わない
あなたが大好きなのに
ひざまずいたり あわてたりすることもないの
必要ないんだもの…
以下コーラス…
My Romance Doesn't Have To Have A Moon In The Sky
My Romance Doesn't Need A Blue Lagoon Standing By...
私のロマンス(恋)には 空の月なんていらない
そばにひろがる 青いサンゴ礁もいらない
5月じゃなくてもいいし 夜空に輝く星も
人目につかない隠れ家も 優しいギターの音色もいらない
私の恋には スペインのお城だっていらない
ときめきのリフレインに合わせたダンスもいらない
しっかりと眼を開けば 素敵な夢は叶えられるの
私の恋には何もいらない あなた以外には…
ロマンスという語は、単に「恋」とした方がスッキリしそうだ。
「何もいらない、ただあなたの愛があれば」というただそれだけの歌なのだが、並べられているものは「ロマンス」のいろいろなシチュエーションの数々だ。
その中に「5月」が入っているところをみると、恋するには最適の季節だということなのだろう。
誕生月が5月の方々に心からおめでとうと言いたい(笑)。
だが、そうした恋のおぜん立てのようなシロモノはすべていらないと、あえて宣言したうえで、最後に「必要なのはあなただけ(But You)」とオチをつけるのである。
確かにスペインのお城なんて別に無くたっていいし、足元にサンゴ礁なんて全然いらないし、やっぱり君がいれば幸せだってこと…そりゃそうだろう(笑)。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪
(LEE WILEY)
(TUCK & PATTI)
さて、この歌、ヴォーカルではどうだろうか。
秀逸な歌唱といわれる二組を紹介しておこう。
昔からベスト・レコーディングとされているのがリー・ワイリー。
夜のムードでしっとりと「私の恋」を語りつくしている。
もうひとつ、比較的新しいところで、ギターとヴォーカルの夫婦ユニット、タック&パティ。
女性歌手のパティ・キャスカートが歌い、夫のタック・アンドレスがギターを弾くという最小のユニットである。
パティのソウルフルな歌唱、タックの少しフォーキーなジャズ・ギターがすばらしい。
ただし、この二組は我がライブラリーにはないのが残念。
そして我がライブラリーの棚を掻きまわしてみると…
![]()
(MY ROMANCE/Carly Simon)
カーリー・サイモン。
主に80年代に活躍したシンガー&ソングライターだが、近年相次いでリリースしているスタンダード集の1枚で、アルバムタイトルにもしている。
歌詞をゆっくりと味わうように秘めた恋心を歌いあげている。
![]()
(BOOK OF BALLADS/Carmen McRae)
そして大推薦盤がカーメン・マクレエ。
ドン・アブニーのピアノのイントロに続いて、少し渋めで抑え気味に歌い出すが、隅々まで心配りのきいたカーメンらしさがよく出た名唱である。
彼女の歌唱の磁場を計測することができたならきっととても強い磁力にちがいない。
聴き込むほどに惚れ直すスルメのような歌唱、これはすごいよ。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
“MY ROMANCE”は、あなた以外何もいらないと歌うが、二人が愛を育んでいく過程で、お互いの本性が見えてきて、小さな違和感や嫌悪感が次第に大きくなっていくこともあるだろう。
そのとき、あなたはどうするか?
自分を無理に納得させて付き合い続けたり、はたまた立ち止まってみて二人の関係を考え直してみたり、大いに思い悩むのではなかろうか。
お悩みの節にはぜひこういう選択肢もご一考願いたいものである。
本日の一句
「過ちと知りつつ前へ行くスリル」(蚤助)
相当無責任だと自覚はしているのですが…(笑)
今回も、本ブログにこれまで何度も登場した作曲家リチャード・ロジャースと作詞家ロレンツ・ハートのコンビによる作品である。
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ミュージカル『ビリー・ローズのジャンボ』(BILLY ROSE'S JUMBO - 1935)のために書かれたナンバーで、翌年ポール・ホワイトマン楽団でヒットしたというのだが、これは調べたからわかったのであって、もちろんその演奏は知らない。
オリジナルのステージは、あまり人気が出ず半年もたずに上演打ち切りになったと記録にある。
ちなみに、ビリー・ローズというのはアメリカ芸能界の大興行師として名高く、この作品も彼の製作によるものだった。
♪ ♪
記憶にあるのは1962年にドリス・デイ主演で映画化された同名作品(邦題『ジャンボ』)の方で、華やかなサーカスを舞台に、確か巨象のジャンボが人気の一座の物語だったと思う。
監督が『上流社会』(HIGH SOCIETY)などを撮ったチャールズ・ウォルターズ、脚本はシドニー・シェルダンであった。
例えば、サーカスシーンなどは、舞台の上より映画の方がいろいろなシーンを撮って見せられるだろうし、その他おそらく映画化にあたって相当脚本に手が加えられたのではなかろうか。
映画の方はまずまずの出来だったと思う。
で、この映画版では“MY ROMANCE”をドリス・デイが歌った(“BILLY ROSE'S JUMBO/Original Soundtrack”)。
もちろん、当時まだ小学生だった私にこの歌の良さがわかったはずがない。
♪ ♪ ♪
この曲に真面目に向き合ったのはビル・エヴァンス・トリオの名盤中の名盤“WALTZ FOR DEBBY”を聴いてからのことである。

(WALTZ FOR DEBBY/Bill Evans Trio)
エヴァンスのピアノに絡むスコット・ラファロのベース、控えめながらメリハリのついた的確なサポートを送るポール・モチアンのシンバル、この三者によるコラボレーションは繊細にしてスリリングでいつまでも心に残った。
それは高校生のときであったが、私はエヴァンス・トリオの演奏を通じて、この曲の美しいメロディを覚えたのである。
♪ ♪ ♪ ♪
ミュージカルのために書かれた曲なので、ヴァースがついている。
♪ 手にキスをしようなんて思わない
あなたが大好きなのに
ひざまずいたり あわてたりすることもないの
必要ないんだもの…
以下コーラス…
My Romance Doesn't Have To Have A Moon In The Sky
My Romance Doesn't Need A Blue Lagoon Standing By...
私のロマンス(恋)には 空の月なんていらない
そばにひろがる 青いサンゴ礁もいらない
5月じゃなくてもいいし 夜空に輝く星も
人目につかない隠れ家も 優しいギターの音色もいらない
私の恋には スペインのお城だっていらない
ときめきのリフレインに合わせたダンスもいらない
しっかりと眼を開けば 素敵な夢は叶えられるの
私の恋には何もいらない あなた以外には…
ロマンスという語は、単に「恋」とした方がスッキリしそうだ。
「何もいらない、ただあなたの愛があれば」というただそれだけの歌なのだが、並べられているものは「ロマンス」のいろいろなシチュエーションの数々だ。
その中に「5月」が入っているところをみると、恋するには最適の季節だということなのだろう。
誕生月が5月の方々に心からおめでとうと言いたい(笑)。
だが、そうした恋のおぜん立てのようなシロモノはすべていらないと、あえて宣言したうえで、最後に「必要なのはあなただけ(But You)」とオチをつけるのである。
確かにスペインのお城なんて別に無くたっていいし、足元にサンゴ礁なんて全然いらないし、やっぱり君がいれば幸せだってこと…そりゃそうだろう(笑)。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪


さて、この歌、ヴォーカルではどうだろうか。
秀逸な歌唱といわれる二組を紹介しておこう。
昔からベスト・レコーディングとされているのがリー・ワイリー。
夜のムードでしっとりと「私の恋」を語りつくしている。
もうひとつ、比較的新しいところで、ギターとヴォーカルの夫婦ユニット、タック&パティ。
女性歌手のパティ・キャスカートが歌い、夫のタック・アンドレスがギターを弾くという最小のユニットである。
パティのソウルフルな歌唱、タックの少しフォーキーなジャズ・ギターがすばらしい。
ただし、この二組は我がライブラリーにはないのが残念。
そして我がライブラリーの棚を掻きまわしてみると…

(MY ROMANCE/Carly Simon)
カーリー・サイモン。
主に80年代に活躍したシンガー&ソングライターだが、近年相次いでリリースしているスタンダード集の1枚で、アルバムタイトルにもしている。
歌詞をゆっくりと味わうように秘めた恋心を歌いあげている。

(BOOK OF BALLADS/Carmen McRae)
そして大推薦盤がカーメン・マクレエ。
ドン・アブニーのピアノのイントロに続いて、少し渋めで抑え気味に歌い出すが、隅々まで心配りのきいたカーメンらしさがよく出た名唱である。
彼女の歌唱の磁場を計測することができたならきっととても強い磁力にちがいない。
聴き込むほどに惚れ直すスルメのような歌唱、これはすごいよ。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
“MY ROMANCE”は、あなた以外何もいらないと歌うが、二人が愛を育んでいく過程で、お互いの本性が見えてきて、小さな違和感や嫌悪感が次第に大きくなっていくこともあるだろう。
そのとき、あなたはどうするか?
自分を無理に納得させて付き合い続けたり、はたまた立ち止まってみて二人の関係を考え直してみたり、大いに思い悩むのではなかろうか。
お悩みの節にはぜひこういう選択肢もご一考願いたいものである。
本日の一句
「過ちと知りつつ前へ行くスリル」(蚤助)
相当無責任だと自覚はしているのですが…(笑)