You made me leave my happy home
You took my love, and now you've gone
Since I fell for you...
これは“あなたは幸せな家庭を捨てさせ、私の愛を手に入れたのに、今、私のもとを去ってしまった”と歌いながら、まだ相手に未練がある、まだ愛している…そんな主人公が登場する胸が締め付けられるようなつらく哀しい恋の歌“SINCE I FELL FOR YOU”である。
“FALL FOR”という言い回しは、俗語で「(策略、宣伝、うまい話などに)だまされる、一杯食わされる」とか「〜を信じ込む、〜をうのみにする」とかいうニュアンスだから、あまり良い意味ではない。
邦題は『君を恋してから』とか『あなたを愛したときから』などとロマンティックなのだが、実のところは、相手の愛を信じたのに捨てられたと嘆いているのである。
この曲は、ブルース系の歌手兼ピアニストであったバディ・ジョンソンが1947年に自身のオーケストラを率いて発表したそうだが、ヒットさせたのは、同年末にアニー・ローリーのヴォーカルをフィーチャーしたピアニストのポール・ゲイテン&ヒズ・トリオだった。
そのポール・ゲイテンの音源は、現在のところ入手不能の状況らしくて、どこにも見つけられなかったのが残念である。
実は何を隠そう、蚤助がこの曲を初めて聴いたのはインストで、どんな内容の歌かを知らなかったのだ。
蚤助が高校生になったばかりの頃であろうか、かのラムゼイ・ルイス・トリオのベストセラーのライヴ・アルバム“THE IN CROWD”(1965)に収められていたものであった。
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(Ramsey Lewis/The In Crowd)
60年代、タレント性豊かなベース奏者のエルディー・ヤングとドラマーのレッド・ホルトを従えたラムゼイ・ルイスはロック・ビートを積極的に採り入れたソウルフルなプレイ・スタイルで引っ張りだこの存在であった。
この曲はヒットチャートにも入るほどの大ヒットとなったアルバム・タイトル曲“THE IN CROWD”に続いて演奏されたのだが、ソウルフルなバラード仕立てだったのにはまったのであろう、一聴してお気に入りになったのだった(こちら)。
その次に聴いたのもインストで、リー・モーガンの人気アルバム“CANDY”(1957)の中の一曲であった
こちらは、前年に事故死したばかりのクリフォード・ブラウンの後継者とみなされていた当時弱冠19歳のモーガン唯一のワン・ホーン・アルバムである。
ソニー・クラークのピアノ、ダグ・ワトキンスのベース、アート・テイラーのドラムスというピアノトリオを率いて、若者とは思えぬほどのしっとりとしたバラッド・プレイを聴かせる(こちら)。
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(Lee Morgan/Candy)
佳曲だとは認識していたものの、それまで歌ものとしては聴いたことはなかった曲だったが、ある日、ラジオを聴いていた蚤助の耳に飛び込んできたのが、女性1人が入ったピッツバーグ出身の白人ドゥー・ワップ・クインテット、ザ・スカイライナーズ(見出し画像)のコーラスであった。
スカイライナーズは、1950年代後半から60年代前半にかけて、この曲をはじめいくつかの珠玉のヒット・レコードを放っているが、おそらくもっとも有名なのは“SINCE I DON'T HAVE YOU”であろう(ちょっと道草でこちら)。
映画“アメリカン・グラフィティ”に彼らのこの歌が流れてきたときの感動は今もって忘れることはできない。
透き通るようなハイ・テナーのリード・ヴォーカルを担当していたのがジミー・ボーモントで、R&B感覚を身につけた卓越したシンガーであった。
爽やかでクリーンな歌声だが、よく耳を傾けるとどこか黒っぽく、それに絡む紅一点のジャネット・ヴォーゲルを含むのびやかなコーラス・ハーモニーとの微妙な按配がこのグループの魅力ではなかったかと思う。
蚤助も時としてこの二曲のタイトルを間違うことがあるのだが、“SINCE I DON'T HAVE YOU”あるいは“SINCE I FELL FOR YOU”のようなセンチメンタルな歌にぴったりのコーラス・グループであった(こちら)。
だが、真にこの曲が広く認知されるようになったのは、スカイライナーズと同時期の63年に吹き込まれたレ二ー・ウェルチのヴァージョンが、全米チャートの上位に食い込んだからである。
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(Lenny Welch)
When you just give love, and never get love
You'd better let love depart
I know it's so, and yet I know
I can't get ou out of my heart…
ただ愛を与えておいて 決して愛を得られないなら
愛とはお別れすべきだ
そう知っていたし 今も知っている私なのに
私の心からあなたを追い出すことなんてできない…
ウエルチはスカイライナーズが省略した上記のヴァースから歌い始めている。
また、黒人シンガーながら、スカイライナーズとは逆にやや白人寄りのアダルト・コンテンポラリー・スタイルなのが面白いところである(こちら)。
もうひとつ、感動的だと思うのが、女性ソウル歌手ローラ・リーのヴァージョン(1972)である。
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(Laura Lee)
およそ8分を超える長編になっていて、モノローグとヴォーカルを交ぜ合せながら、男女ふたりの出会いから物語っていく。
テンポの変化も聞き逃せない(こちら)。
不倫をしたのであろう、紆余曲折の末に一緒になったものの、相手にまた捨てられてしまうという歌である。
ままごとのパパも時折浮気する (蚤助)
子供の世界にだってそんなことはよくあるのさ(笑)。
You took my love, and now you've gone
Since I fell for you...
これは“あなたは幸せな家庭を捨てさせ、私の愛を手に入れたのに、今、私のもとを去ってしまった”と歌いながら、まだ相手に未練がある、まだ愛している…そんな主人公が登場する胸が締め付けられるようなつらく哀しい恋の歌“SINCE I FELL FOR YOU”である。
“FALL FOR”という言い回しは、俗語で「(策略、宣伝、うまい話などに)だまされる、一杯食わされる」とか「〜を信じ込む、〜をうのみにする」とかいうニュアンスだから、あまり良い意味ではない。
邦題は『君を恋してから』とか『あなたを愛したときから』などとロマンティックなのだが、実のところは、相手の愛を信じたのに捨てられたと嘆いているのである。
この曲は、ブルース系の歌手兼ピアニストであったバディ・ジョンソンが1947年に自身のオーケストラを率いて発表したそうだが、ヒットさせたのは、同年末にアニー・ローリーのヴォーカルをフィーチャーしたピアニストのポール・ゲイテン&ヒズ・トリオだった。
そのポール・ゲイテンの音源は、現在のところ入手不能の状況らしくて、どこにも見つけられなかったのが残念である。
実は何を隠そう、蚤助がこの曲を初めて聴いたのはインストで、どんな内容の歌かを知らなかったのだ。
蚤助が高校生になったばかりの頃であろうか、かのラムゼイ・ルイス・トリオのベストセラーのライヴ・アルバム“THE IN CROWD”(1965)に収められていたものであった。

(Ramsey Lewis/The In Crowd)
60年代、タレント性豊かなベース奏者のエルディー・ヤングとドラマーのレッド・ホルトを従えたラムゼイ・ルイスはロック・ビートを積極的に採り入れたソウルフルなプレイ・スタイルで引っ張りだこの存在であった。
この曲はヒットチャートにも入るほどの大ヒットとなったアルバム・タイトル曲“THE IN CROWD”に続いて演奏されたのだが、ソウルフルなバラード仕立てだったのにはまったのであろう、一聴してお気に入りになったのだった(こちら)。
その次に聴いたのもインストで、リー・モーガンの人気アルバム“CANDY”(1957)の中の一曲であった
こちらは、前年に事故死したばかりのクリフォード・ブラウンの後継者とみなされていた当時弱冠19歳のモーガン唯一のワン・ホーン・アルバムである。
ソニー・クラークのピアノ、ダグ・ワトキンスのベース、アート・テイラーのドラムスというピアノトリオを率いて、若者とは思えぬほどのしっとりとしたバラッド・プレイを聴かせる(こちら)。

(Lee Morgan/Candy)
佳曲だとは認識していたものの、それまで歌ものとしては聴いたことはなかった曲だったが、ある日、ラジオを聴いていた蚤助の耳に飛び込んできたのが、女性1人が入ったピッツバーグ出身の白人ドゥー・ワップ・クインテット、ザ・スカイライナーズ(見出し画像)のコーラスであった。
スカイライナーズは、1950年代後半から60年代前半にかけて、この曲をはじめいくつかの珠玉のヒット・レコードを放っているが、おそらくもっとも有名なのは“SINCE I DON'T HAVE YOU”であろう(ちょっと道草でこちら)。
映画“アメリカン・グラフィティ”に彼らのこの歌が流れてきたときの感動は今もって忘れることはできない。
透き通るようなハイ・テナーのリード・ヴォーカルを担当していたのがジミー・ボーモントで、R&B感覚を身につけた卓越したシンガーであった。
爽やかでクリーンな歌声だが、よく耳を傾けるとどこか黒っぽく、それに絡む紅一点のジャネット・ヴォーゲルを含むのびやかなコーラス・ハーモニーとの微妙な按配がこのグループの魅力ではなかったかと思う。
蚤助も時としてこの二曲のタイトルを間違うことがあるのだが、“SINCE I DON'T HAVE YOU”あるいは“SINCE I FELL FOR YOU”のようなセンチメンタルな歌にぴったりのコーラス・グループであった(こちら)。
だが、真にこの曲が広く認知されるようになったのは、スカイライナーズと同時期の63年に吹き込まれたレ二ー・ウェルチのヴァージョンが、全米チャートの上位に食い込んだからである。

(Lenny Welch)
When you just give love, and never get love
You'd better let love depart
I know it's so, and yet I know
I can't get ou out of my heart…
ただ愛を与えておいて 決して愛を得られないなら
愛とはお別れすべきだ
そう知っていたし 今も知っている私なのに
私の心からあなたを追い出すことなんてできない…
ウエルチはスカイライナーズが省略した上記のヴァースから歌い始めている。
また、黒人シンガーながら、スカイライナーズとは逆にやや白人寄りのアダルト・コンテンポラリー・スタイルなのが面白いところである(こちら)。
もうひとつ、感動的だと思うのが、女性ソウル歌手ローラ・リーのヴァージョン(1972)である。

(Laura Lee)
およそ8分を超える長編になっていて、モノローグとヴォーカルを交ぜ合せながら、男女ふたりの出会いから物語っていく。
テンポの変化も聞き逃せない(こちら)。
不倫をしたのであろう、紆余曲折の末に一緒になったものの、相手にまた捨てられてしまうという歌である。
ままごとのパパも時折浮気する (蚤助)
子供の世界にだってそんなことはよくあるのさ(笑)。