ジョニー・バーク&ジミー・ヴァン・ヒューゼンの作品が続いたが、このコンビによるビッグ・バンド時代を華やかに彩ったヒット曲について語って、ひとまず区切りをつけることにしよう。
前稿の“Polka Dots And Moonbeams”と同年の40年に発表された“Imagination”である。グレン・ミラー楽団の大ヒット曲として知られる。それに、シナトラとトミー・ドーシー楽団、ベニー・グッドマン楽団、アーティ・ショウ、当時バンド・リーダー兼歌手をこなしていたエラ・フィッツジェラルドなどが次々に取り上げ大好評を博したという曲である。
現代は、ITC(Information & Communication Technology)、すなわち「情報通信技術」の時代。世の中には情報があふれていて、情報社会というよりも情報過多社会と言いたくもなる。
しかもその情報は時々刻々垂れ流しされている。
空想とか想像とか、自分のイメージの世界に遊ぶことも、現代ではITCを通じて行われるというのが一般的になっている。ところが、ITCに慣れた若い世代の一部には、時々、空想と現実のけじめがつかなくなって、無理やり空想を現実にしようとして、思わぬ事件を起こしたりすることがある。
それが妄想というものであろう。
そんな時代の若い世代にはこの歌の良さなんて、もう理解されないのではないか、と危惧したりする。
IMAGINATION (1940)
(Words by Johnny Burke/Music by Jimmy Van Heusen)
Imagination is funny, it makes a cloudy day sunny
Makes a bee think of honey, just as I think of you
Imagination is crazy, your whole persprective gets hazy
Starts you asking a daisy, what to do, what to do...
想像力っておもしろい くもり空が晴れになる
ミツバチが蜂蜜を思うように あなたのことを思うわたし
想像力は陶酔 あなたの姿かたちがぼやけてくる
ヒナギクに どうすべきか 何をすべきか と問い始める...
「想像力っておもしろい」と歌い出すから、どんなにおもしろいのかと思うと、「くもり空が晴れの日に」「ミツバチが蜂蜜を」なんていう程度である。恋というものを知ってしまった初々しい気持ちを歌っているわけだ。恋したものの、あれこれと相手のことを想像するだけで、胸を焦がしているという図であろうか。
でも、この歌の主人公は、ちょっと情けないようだ。このあと、同じ想像するにしても、相手が自分のことを思っているという想像はできないと、ひとりで悶々としているのだ。
Have you ever felt a gentle touch
And then a kiss and then and then
Find it's only your imagination again, Oh well
Imagination is silly, You go around willy nilly
For example I go around wanting you
And yet I can't imagine that you want me too
やさしく触れられた経験がある?
それからキス それから また それから
でも それって想像にすぎないって また気づいてしまう
ああ 想像力って愚かしい
あなたはわけもなく歩き回る
あなたを求めてうろつき回るわたしと同じように
でも あなたがわたしを求めているなんてことは
とても想像することができない
このバークの歌詞は、初心な恋心を可愛らしく表現しているが、さほどイマジネーション豊かとも思えない(笑)。だが、ヴァン・ヒューゼンのメロディがつくと、実にすばらしいバラードになってしまうのが不思議だ。このあたりが名曲の名曲たる所以であろうか。
蚤助がこの曲を初めて耳にしたのは、アート・ペッパーがマイルス・デイヴィスのオリジナル・クインテットのリズム隊と共演したものであったが、「美しい曲だなあ」と思った鮮明な記憶が残っている。
57年の録音で、レッド・ガーランド=ポール・チェンバース=フィリー・ジョー・ジョーンズという全米リズム・セクションを向こうにまわして、西海岸の白人アルトの雄が一発録りの真剣勝負に挑んだ名演だ。強力なリズム隊を前に、ワン・ホーンで文字通り“imaginative”なプレイを披露している。
ヴォーカルでは、エラ・フィッツジェラルドのヴァージョン。
54年のアルバム“Songs In A Mellow Mood”に収録されたものだ。名手エリス・ラーキンスのピアノ伴奏だけで歌う、彼女の透明感のあるロング・トーンが、このメロディにピッタリで、まさにバラードの名唱と呼ぶにふさわしい。
もうひとつ、やはりシナトラの再吹き込み。
前稿同様、アルバム“I Remember Tommy...”からで、エラとは違って、オーケストラをバックにミディアム・スイングのスタイルで歌う。この雰囲気はさすがだ。涼しくなっていくこれからの季節にはヴォーカルを聴きたくなるものだが、こんな歌を肴に晩酌をしたいものだ、と「想像」(妄想?)する蚤助である。
誰かより何かを想像させるヒト 蚤助
前稿の“Polka Dots And Moonbeams”と同年の40年に発表された“Imagination”である。グレン・ミラー楽団の大ヒット曲として知られる。それに、シナトラとトミー・ドーシー楽団、ベニー・グッドマン楽団、アーティ・ショウ、当時バンド・リーダー兼歌手をこなしていたエラ・フィッツジェラルドなどが次々に取り上げ大好評を博したという曲である。
現代は、ITC(Information & Communication Technology)、すなわち「情報通信技術」の時代。世の中には情報があふれていて、情報社会というよりも情報過多社会と言いたくもなる。
しかもその情報は時々刻々垂れ流しされている。
空想とか想像とか、自分のイメージの世界に遊ぶことも、現代ではITCを通じて行われるというのが一般的になっている。ところが、ITCに慣れた若い世代の一部には、時々、空想と現実のけじめがつかなくなって、無理やり空想を現実にしようとして、思わぬ事件を起こしたりすることがある。
それが妄想というものであろう。
そんな時代の若い世代にはこの歌の良さなんて、もう理解されないのではないか、と危惧したりする。
IMAGINATION (1940)
(Words by Johnny Burke/Music by Jimmy Van Heusen)
Imagination is funny, it makes a cloudy day sunny
Makes a bee think of honey, just as I think of you
Imagination is crazy, your whole persprective gets hazy
Starts you asking a daisy, what to do, what to do...
想像力っておもしろい くもり空が晴れになる
ミツバチが蜂蜜を思うように あなたのことを思うわたし
想像力は陶酔 あなたの姿かたちがぼやけてくる
ヒナギクに どうすべきか 何をすべきか と問い始める...
「想像力っておもしろい」と歌い出すから、どんなにおもしろいのかと思うと、「くもり空が晴れの日に」「ミツバチが蜂蜜を」なんていう程度である。恋というものを知ってしまった初々しい気持ちを歌っているわけだ。恋したものの、あれこれと相手のことを想像するだけで、胸を焦がしているという図であろうか。
でも、この歌の主人公は、ちょっと情けないようだ。このあと、同じ想像するにしても、相手が自分のことを思っているという想像はできないと、ひとりで悶々としているのだ。
Have you ever felt a gentle touch
And then a kiss and then and then
Find it's only your imagination again, Oh well
Imagination is silly, You go around willy nilly
For example I go around wanting you
And yet I can't imagine that you want me too
やさしく触れられた経験がある?
それからキス それから また それから
でも それって想像にすぎないって また気づいてしまう
ああ 想像力って愚かしい
あなたはわけもなく歩き回る
あなたを求めてうろつき回るわたしと同じように
でも あなたがわたしを求めているなんてことは
とても想像することができない
このバークの歌詞は、初心な恋心を可愛らしく表現しているが、さほどイマジネーション豊かとも思えない(笑)。だが、ヴァン・ヒューゼンのメロディがつくと、実にすばらしいバラードになってしまうのが不思議だ。このあたりが名曲の名曲たる所以であろうか。
蚤助がこの曲を初めて耳にしたのは、アート・ペッパーがマイルス・デイヴィスのオリジナル・クインテットのリズム隊と共演したものであったが、「美しい曲だなあ」と思った鮮明な記憶が残っている。
57年の録音で、レッド・ガーランド=ポール・チェンバース=フィリー・ジョー・ジョーンズという全米リズム・セクションを向こうにまわして、西海岸の白人アルトの雄が一発録りの真剣勝負に挑んだ名演だ。強力なリズム隊を前に、ワン・ホーンで文字通り“imaginative”なプレイを披露している。
ヴォーカルでは、エラ・フィッツジェラルドのヴァージョン。
54年のアルバム“Songs In A Mellow Mood”に収録されたものだ。名手エリス・ラーキンスのピアノ伴奏だけで歌う、彼女の透明感のあるロング・トーンが、このメロディにピッタリで、まさにバラードの名唱と呼ぶにふさわしい。
もうひとつ、やはりシナトラの再吹き込み。
前稿同様、アルバム“I Remember Tommy...”からで、エラとは違って、オーケストラをバックにミディアム・スイングのスタイルで歌う。この雰囲気はさすがだ。涼しくなっていくこれからの季節にはヴォーカルを聴きたくなるものだが、こんな歌を肴に晩酌をしたいものだ、と「想像」(妄想?)する蚤助である。
誰かより何かを想像させるヒト 蚤助