Quantcast
Channel: ただの蚤助「けやぐの広場」~「けやぐ」とは友だち、仲間、親友という意味あいの津軽ことばです
Viewing all articles
Browse latest Browse all 315

#498: 降っても晴れても

$
0
0
新聞によれば、東京都の猪瀬知事が気象庁の天気予報を批判し話題になっているという。

2月6日に都内でも大雪の恐れがあるとした同庁の発表について、知事はツイッターで、1月14日(成人の日)に予報を外した同庁が「責任逃れ」や「自己保身」のため、「過剰に積雪量を見積もった」とつぶやいた。

8日の記者会見で、つぶやきの根拠を問われた知事は、「深夜に空を見ても、雪が降る気配が全くなかった」と、これまでデータにこだわってきたノンフクション作家らしくない回答をしたうえ、「(気象庁は)心理的にぶれるんじゃないか」と、持論を曲げなかった。

記事は、なんとなく猪瀬知事を揶揄しているような感じもするが、これに対して、気象庁が「予報は科学的知見に基づいており、心理的影響は全くない」と真面目に回答しているのが妙におかしい。

まあ、雪や雨が降ろうが降るまいが、降っても晴れても、今のところ私にとってはあまり影響はないのだが、明日、もしも“THE END OF THE WORLD”(世界の終わり)だったらどうするか。
巨大隕石が落下してくるとか、核ミサイルが降ってくるとかしたらどうする。
食い止める手立てはもはやなく、地球から脱出もできない。
そんな最後の日に一緒に過ごしたい人は、あなたにいるだろうか。

案外、幸せというのは最後の日に一緒にいたい人がいる、というシンプルなことなのかもしれないと思う。


“COME RAIN OR COME SHINE”という曲は、かつて「照るか曇るか」(降れば土砂降り、晴れれば日干し)なんて迷訳・珍訳もあったが、現在では『降っても晴れても』という邦題が定着している。

ハロルド・アーレンの書いたメロディを聴いた作詞家のジョニー・マーサーは、すぐ出だしの歌詞を思いついてメモをしたところ、アーレンが“Come Hell Or High Water”(どんな障害があろうと)と続けた。
それをマーサーがすぐさま“Come Rain Or Come Shine”と訂正して受けて、たちまちにして歌が出来上がったという。

ちなみに“Come Rain Or Come Shine(Come Rain Or Shine)”を英英辞典で調べると,
“Spoken whatever happens or whatever the weather is like: Don't Worry. We'll be There‐rain or shine”などと出ていて、「どんなことが起ころうとも」というような意味のようだ。

ルビー・ヒル、ファニタ・ホール、パール・ベイリーなど黒人ばかりの出演者で上演された『セントルイスの女』(1946)というミュージカルのために作られた。
このミュージカルは、当初リナ・ホーンが主演の予定であったが、スケジュールの調整が不調に終わり、主演がパール・ベイリーに変更されたが、興行的には失敗作だったようだ。
ところが、作曲者のアーレンはこの曲を捨てきれず、別のミュージカル『ブルース・オペラ』(1957)でも使ったが、このミュージカルも当たらず、降っても晴れてもどころか、土砂降りだらけの、どうやらあまり験の良くない曲のようなのだ(笑)。

♪ ♪
 ♪ 私は あなたを愛した誰よりも あなたを愛したい
   山のように高く 河のように深く 降っても 晴れても
   …
   あなたは 私を愛した誰よりも 私を愛してほしい
   降っても 晴れても 幸せな時も そうでない時も
   お金があろうと なかろうと 二人が一緒なら素晴らしい…

「じーんせい、楽ありゃ苦もあるさー♪」と思わず水戸黄門をしてしまうような歌であり(笑)、貧乏かもしれないけど楽しくやっていける、幸せも不幸せも二人ならば苦にはならない、どんなことがあろうとも離ればなれにならない、ずっとそばにいるよ…
そんな求愛の歌でもある。

“OVER THE RAINBOW”などを作ったアーレンは、小粋なメロディと洗練されたコード進行をもつ作品を残していて、どちらかといえば通人好みのする作曲家であった。
マーサーの詞の方は熱烈な表現の割には、さほど洒落た歌詞とも思えないが、メロディの流れとはよくマッチしていて、職人芸を感じさせる。

この曲、原曲はバラードなのだが、バラードとして歌うタイプと、アップ・テンポでスインギーなナンバーとして歌うタイプの2系統に大別されるようだ。

 (Sarah Vaughan)

『SARAH VAUGHAN IN HI-FI』でのサラ・ヴォーンは、当時の彼女の特徴である粘っこいフレージングを生かしたエモーショナルなバラード唱法の名唱を披露している。

 (The Four Freshmen)  (The Hi-Lo's)

一方、この曲、コーラス・グループの手にかかると、アップ・テンポのナンバーとなることが多いと思う。
オープン・ハーモニーの魅力を世に知らしめたモダン・ジャズ・コーラス・グループの最高峰フォア・フレッシュメンは、アルバム『THE FOUR FRESHMEN & FIVE GUITARS』で、早いテンポのサンバ調のリズムをバックに、まことに楽しさあふれるコーラスを聴かせる。
またフォア・フレッシュメンの後輩グループ、ハイ・ローズは、1978年の再結成アルバム『BACK AGAIN』で、これまたアップ・テンポで弾むようなコーラスを展開している。

演奏ものにも、素晴らしいものが多いのだが、ピアノ・トリオに限っていえば、代表格はビル・エヴァンスとウィントン・ケリーであろう。

 (Bill Evans)  (Wynton Kelly)

どちらも私好みのプレイだが、ピアノ・ジャズの素晴らしさを堪能させてくれる名演である。

いずれにせよ、テンポがどうあろうとも、この曲の魅力が変わるというわけではない。
それぞれの歌手、ミュージシャンの解釈の違いが、テンポの設定やフレージングに作用し、この曲に新しい生命を吹き込んでいる点を楽しみたい。

♪ ♪ ♪
都知事がクレームをつけた天気予報、個人的には降っても晴れてもいいのだが、やはり「晴れ」というのは人の心をウキウキさせるのは確かである。

本日の一句
「予報士が君住む町も晴れという」(蚤助)



Viewing all articles
Browse latest Browse all 315

Trending Articles