かつて、この歌が国産車のテレビCMに使用されたのを知って、「やはり考えることはみな同じ」と思ったことがある。
それは日産の人気車種であった「サニー」のコマーシャルで、使われていた歌はズバリ“SUNNY”であった。
歌っていたのは、確かダスティ・スプリングフィールドだったと思う。
60年代のイギリスの歌姫であったダスティは、なかなか豪華なアレンジのジャズ・ワルツ風に歌っていたのではなかったか。
♪
“SUNNY”(「サニーは恋人」という邦題もある)は黒人のシンガー・ソングライター、ボビー・ヘブ(1938‐2010)が、1966年に放ったソウル・ナンバーで、ビルボードのシングル・チャートで全米2位の大ヒット曲となったが、キャッシュボックスのチャートでは確か全米1位を記録したと思う。
同時に、R&Bチャート、カントリー・チャートでも上位に入る非常に珍しい楽曲となった。
当時、ラジオ深夜番組の熱心なリスナーであった蚤助少年は、同じころ流行っていた黒人ソウルのウィルソン・ピケットやジェームズ・ブラウンらの熱い歌声と異なり、黒っぽさをあまり感じさせないヘブの歌声と洗練されたアレンジに強く惹かれたものだった。
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それもそのはず、ヘブは、白人の音楽であったカントリー・ミュージックの中心地であるテキサス州ナッシュヴィルの生まれで、12歳のときにはカントリー界の重鎮であったロイ・エイカフの推薦もあって、黒人として初めて、伝統的なカントリー・コンサート“GRAND OLE OPRY”に出演していたほどなので、白人の音楽とは親和性があったのだろう。
その後、ギターを師事したチェット・アトキンスの後押しで、音楽界にデビューする。
“SUNNY”が書かれたのは1963年のことで、アメリカの大統領ジョン・F・ケネディが暗殺された11月22日の翌朝、先に音楽界に入っていたヘブの兄が強盗に襲われて命を落とすという事件が起こった。
ヘブが悲嘆に明け暮れ、神に祈る日々の中で生まれた曲だという。
真偽のほどは判らないが、ヘブ自身の歌でレコーディングする以前から、この曲は他のアーティストによって歌われていたとのハナシがあり、一説には“SUNNY”を世界で最初にレコーディングは日本の弘田三枝子だったというのだが、これはトリヴィア的なエピソードである(笑)。
♪ サニー 昨日までの私は 土砂降りの人生
でも 君の笑顔が 私の痛みを消してくれた
暗い日々は去り 光に満ちた日が訪れる
君は 真実そのもの アイ・ラヴ・ユー
サニー 太陽を与えてくれてありがとう
愛を与えてくれてありがとう
君は すべてを私に託してくれた
まるで 背が10フィート(3メートル)になったみたいさ
サニー 真心をありがとう
何から何までありがとう
風に吹かれる砂のように 砕けてしまった人生が
岩のように固まった
サニー 微笑みをありがとう
優しくしてくれてありがとう
君は 命の火花 大切な宝物
君は 真実そのもの アイ・ラヴ・ユー…
「背が10フィートになったみたい」(Now I Feel Ten Feet Tall)というのが面白い表現である。
「サニー」は恋人の名前であろうし、明るい陽射しという意味も込められている。
ヘブの自作曲は3000曲に及ぶといわれているがどれも当たらず、ヒット曲といえば“SUNNY”一曲だけなのだが、60年代に生まれた不朽のスタンダード曲として、ジャズからソウル、ポップスまで、幅広いミュージシャンにカヴァーされており、カヴァーの数は500以上に及ぶという。
CMソングに起用されたダスティ・スプリングフィールドをはじめ、ホセ・フェリシアーノ、スティーヴィー・ワンダー、ウォーカー・ブラザーズ、シェールなどのヴァージョンがすぐ頭に浮かぶのだが、日本ではちょうどグループ・サウンズ花盛りのころで、スパイダーズやカーナビーツが録音している。
(BLUE BURTON/Ann Burton)
だが、ボビー・ヘブ以外のアーティストで個人的に好きなヴァージョンといえば、オランダのアン・バートンが世界的評価を得る契機となった“BLUE BURTON”で、ピアノ・トリオを伴奏に小粋に歌っているジャズ・ヴォーカルが断然素晴らしい。
(CALIFORNIA DREAMING/Wes Montgomery)
インストでは、ウエス・モンゴメリーの“CALIFORNIA DREAMING”、よく歌うウエスのギターが活躍する。
フェイバリット・ヴァージョンである。
なお、最近では、奥田民生が「自動車」にちなんだ曲を集めた“CAR SONGS OF THE YEARS”というちょっとユニークなアルバムで、ヘブのオリジナルに比較的忠実なカヴァーを披露している。
ここで歌われた理由というのが、やはり「日産サニー」にこじつけてというのだから、本当に「CMソングと思いきや…」である(笑)。
♪ ♪
「君はぼくの太陽だ」という趣旨の歌は、“YOU ARE MY SUNSHINE”や“YOU ARE THE SUNSHINE OF MY LIFE”などと同じ発想だが、“SUNNY”の方がどこか敬虔さが感じられるのは、大統領暗殺、兄の非業の死という、曲が誕生した経緯を知っているからかもしれない。
本日の一句
「新婚のころは太陽いま空気」(蚤助)
それは日産の人気車種であった「サニー」のコマーシャルで、使われていた歌はズバリ“SUNNY”であった。
歌っていたのは、確かダスティ・スプリングフィールドだったと思う。
60年代のイギリスの歌姫であったダスティは、なかなか豪華なアレンジのジャズ・ワルツ風に歌っていたのではなかったか。
♪
“SUNNY”(「サニーは恋人」という邦題もある)は黒人のシンガー・ソングライター、ボビー・ヘブ(1938‐2010)が、1966年に放ったソウル・ナンバーで、ビルボードのシングル・チャートで全米2位の大ヒット曲となったが、キャッシュボックスのチャートでは確か全米1位を記録したと思う。
同時に、R&Bチャート、カントリー・チャートでも上位に入る非常に珍しい楽曲となった。
当時、ラジオ深夜番組の熱心なリスナーであった蚤助少年は、同じころ流行っていた黒人ソウルのウィルソン・ピケットやジェームズ・ブラウンらの熱い歌声と異なり、黒っぽさをあまり感じさせないヘブの歌声と洗練されたアレンジに強く惹かれたものだった。

それもそのはず、ヘブは、白人の音楽であったカントリー・ミュージックの中心地であるテキサス州ナッシュヴィルの生まれで、12歳のときにはカントリー界の重鎮であったロイ・エイカフの推薦もあって、黒人として初めて、伝統的なカントリー・コンサート“GRAND OLE OPRY”に出演していたほどなので、白人の音楽とは親和性があったのだろう。
その後、ギターを師事したチェット・アトキンスの後押しで、音楽界にデビューする。
“SUNNY”が書かれたのは1963年のことで、アメリカの大統領ジョン・F・ケネディが暗殺された11月22日の翌朝、先に音楽界に入っていたヘブの兄が強盗に襲われて命を落とすという事件が起こった。
ヘブが悲嘆に明け暮れ、神に祈る日々の中で生まれた曲だという。
真偽のほどは判らないが、ヘブ自身の歌でレコーディングする以前から、この曲は他のアーティストによって歌われていたとのハナシがあり、一説には“SUNNY”を世界で最初にレコーディングは日本の弘田三枝子だったというのだが、これはトリヴィア的なエピソードである(笑)。
♪ サニー 昨日までの私は 土砂降りの人生
でも 君の笑顔が 私の痛みを消してくれた
暗い日々は去り 光に満ちた日が訪れる
君は 真実そのもの アイ・ラヴ・ユー
サニー 太陽を与えてくれてありがとう
愛を与えてくれてありがとう
君は すべてを私に託してくれた
まるで 背が10フィート(3メートル)になったみたいさ
サニー 真心をありがとう
何から何までありがとう
風に吹かれる砂のように 砕けてしまった人生が
岩のように固まった
サニー 微笑みをありがとう
優しくしてくれてありがとう
君は 命の火花 大切な宝物
君は 真実そのもの アイ・ラヴ・ユー…
「背が10フィートになったみたい」(Now I Feel Ten Feet Tall)というのが面白い表現である。
「サニー」は恋人の名前であろうし、明るい陽射しという意味も込められている。
ヘブの自作曲は3000曲に及ぶといわれているがどれも当たらず、ヒット曲といえば“SUNNY”一曲だけなのだが、60年代に生まれた不朽のスタンダード曲として、ジャズからソウル、ポップスまで、幅広いミュージシャンにカヴァーされており、カヴァーの数は500以上に及ぶという。
CMソングに起用されたダスティ・スプリングフィールドをはじめ、ホセ・フェリシアーノ、スティーヴィー・ワンダー、ウォーカー・ブラザーズ、シェールなどのヴァージョンがすぐ頭に浮かぶのだが、日本ではちょうどグループ・サウンズ花盛りのころで、スパイダーズやカーナビーツが録音している。

だが、ボビー・ヘブ以外のアーティストで個人的に好きなヴァージョンといえば、オランダのアン・バートンが世界的評価を得る契機となった“BLUE BURTON”で、ピアノ・トリオを伴奏に小粋に歌っているジャズ・ヴォーカルが断然素晴らしい。

インストでは、ウエス・モンゴメリーの“CALIFORNIA DREAMING”、よく歌うウエスのギターが活躍する。
フェイバリット・ヴァージョンである。
なお、最近では、奥田民生が「自動車」にちなんだ曲を集めた“CAR SONGS OF THE YEARS”というちょっとユニークなアルバムで、ヘブのオリジナルに比較的忠実なカヴァーを披露している。
ここで歌われた理由というのが、やはり「日産サニー」にこじつけてというのだから、本当に「CMソングと思いきや…」である(笑)。
♪ ♪
「君はぼくの太陽だ」という趣旨の歌は、“YOU ARE MY SUNSHINE”や“YOU ARE THE SUNSHINE OF MY LIFE”などと同じ発想だが、“SUNNY”の方がどこか敬虔さが感じられるのは、大統領暗殺、兄の非業の死という、曲が誕生した経緯を知っているからかもしれない。
本日の一句
「新婚のころは太陽いま空気」(蚤助)